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機能的価値だけで働く恐ろしさ。スキマバイトの超普及が迎える働き方の未来

先日、スキマバイトのマッチングサービス「タイミー」のニュースを見かけて、スポットワークサービス(別名:ギグワーク)の成長率に驚きました。

タイミーの累計ワーカー数の推移。2024年2月に700万人を突破(出典:タイミー発表資料)

完全に、スタートアップ界隈のお手本となりそうなスタートアップ・サクセスストーリー……(凄い)。

その他、フリーターやフリーランスなどの“時間の融通が効きやすい”ユーザーを保有する企業も続々とスポットワーク市場に乗り込んできているようです。

スポットワーク(ギグワーク)は、繁忙期の一時的な人手不足や、柔軟性の高い働き方需要など、雇い主と働き手双方のニーズを満たすクレバーなビジネスモデルだなあ…… と関心しつつも、個人的な考察をまとめてみました。

※本記事は、完全に個人の見解なので責任は取れません


スポットワーク市場に参入する人材大手企業たち

#01 メルカリユーザーのクロスセルを狙う、空き時間おしごとアプリ「メルカリ ハロ」 by メルカリ

メルカリの既存アカウントを利用しつつ、メルペイなどとの連携もできるため、すでにユーザーを保有している利点を上手く活用しています。

#02 固定時間で働きたくないタウンワークユーザーを狙う「タウンワークスキマ(仮称) 」 by リクルート

人材大手のリクルートも多くのアルバイトユーザーを抱えているため、2024年秋を目安にスポットワークサービス「タウンワークスキマ(仮称) 」の提供開始を表明しました。

#03 生成AIを活用した対話型バイト探しサービス「dip AIエージェント」 by dip

「バイトル」でおなじみのdipも対話型で“長期か、短期か、単発か”など、ユーザーの希望に沿ったバイトとマッチングできるサービスを発表。今後、アルゴリズムの精度を上げてスポットワークとのマッチング機能追加などを行うかもしれません。

“気分が乗るときに、無理なく働きたい”スタンスは、ライドシェアの加速にも影響している?

スポットワーク(=働き手の意思で仕事を選べる)という観点では、海外では当たり前になっている「ライドシェア」の規制緩和にも通ずるのかな、と思いました。

政府が解禁した“ライドシェアに関する方針”では、タクシー会社などの事業者以外でも、個人でライドシェア事業を行ってもいいように見受けられます。

いち早くライドシェア機能を取り入れた「GO」。捕まらないストレスを超えることはない“不安と価値”

タクシーアプリ「GO」が2024年4月から試験的にライドシェア機能を導入しましたが、“タクシーが捕まらないストレス”を、“同じ値段を払って素人が運転する車に乗る不安”が超えることはなく、私は一切利用せずに、以下の対応を取っています。

  • 気長に待つか

  • 優先料金を追加で支払うか

  • 別タクシーアプリと併用するか

特に、同じお金を払って、プロと素人が入り混じった選択ができること自体がビジネスデザイン視点でも、納得感は得られませんでした。

ANAマイルも貯まるので『GO』を愛用

雇い主と働き手の二方よしだが、お客さんにとっては……? スポットワークの普及で生じる質の低下

スポットワークの普及により、雇い主と働き手の二方よしになりつつも、重要なお客さんの満足度を維持できるか、上がるかどうか、は別の話。弊害が起きそうな事象を考察してみました。

#01 ホスピタリティ、オペレーションの質の低下

特に個人店。チェーン店のようなオペレーションマニュアルのない店舗では平準化しづらいです。都度、アルバイトが入れ替わる場合、OJTのような教育コスト・時間を費やす余裕もなく、最低限のこともできずに、“個人店ならではの属人化された柔軟性やホスピタリティ”を提供することもままならないでしょう。

店舗によっては、そういったスポットワーカー(ギグワーカー)向けにマニュアルを作成しているところもあるようですが、限界がありそうです。

#02 IT弱者な老舗店の人手不足が加速

スポットワークサービスを上手く活用できるのは、ある程度ITリテラシーの高い人が中にいる店と思われます。“ITに疎い”昔気質な店の場合、以下のように人材確保が困難になると想像しました。

  • (若者)昔からある日雇いの単発:スポットワークサービスに取られる

  • (若者)固定バイト(都内最低賃金の1,113円前後):TikTokなどのライバーや、クラウドソーシングサービスなどの副業サービスに取られる

  • (ミドル・主婦層)日雇いや固定バイト:家庭事情で日中稼働しかできない制限があるため、客入りが増える夕方〜深夜帯が不足

#03 無くならないドタキャン

雇い主とお客さんの二方わるしになってしまう、最悪のドタキャン。「タイミー」にもドタキャン率表示や、それに伴うペナルティポイント発生などの機能はありますが、0(ゼロ)になることはかなり難しいと思いました。

某デリバリーフードサービスのように、「(個人の裁量だから)ごめんね」と、AIチャット返信&返金するだけといった、心にシコリが残るカスタマーサポートにならないことを願います。

この3つは、素人の私でも思いつく事項なので、恐らく事業サイドにとっては釈迦に説法ですでに認識・対策案を考えていると思います。“個人の労働力をお金に換える責任の重大さ”を改めて感じました。

スキマバイターとの相性はMBTI診断で図るのも手?
「顔なじみのお客さんとの対話を楽しんだり、会計に時間のかかる高齢者をいつも温かく待てたりするお店に、スキマバイトでせっかちな店員が採用されたら……?」 ちょっとハラハラするようなシチュエーションで、その逆も然り。

例えば、“忙しい店にはセカセカ系” “地域密着店にはほんわか系”など、今流行りのMBTI診断で店舗ごとの方針や相性を測るとか。“働きやすさ=人との相性”でもあるので、そのシンクロ率が上がれば、一概にスキマバイトが質の低下を招くとは言い切れないかもしれません。

機能的価値だけで働く恐ろしさ

就職活動をミスって叩き上げで生きてきた私は昔気質な人間でもあるので、“時給単価や日時、業務内容”などの「機能的価値」だけで働く内容を判断する、される、世の中になることを懸念しています。

なぜなら、“働くことへの楽しさを感じづらいから”。

かくいう私も、学生時代にはカフェやコンビニ、バー、古着屋、アパレル…… 数え切れないほどのアルバイトを経験してきました。 人生で初めて、社会の複雑さや、働く厳しさ・楽しさを教えてくれたのもアルバイトなので、一家言あるのです。

働きがいとストレスは共存するから。

多少のストレスを感じながらも、壁にぶち当たり、仲間と乗り越えて、絆が生まれて、仕事の辛さ、楽しさ、やりがい、意義を見つけて、愛着が生まれ、生きる活力につながるものだと思います。

スポットワークを全否定しているわけではなく、「物は使いよう」なので、自分の意思をきっちり持って、程よいバランスで使いこなせる人が増えるといいと感じました。

“使い、使われるだけ”の機械的ではない、流される働き方が一般化しないことを切に願って。

※(再掲載)本記事は、完全に個人の見解なので責任は取れません

文:ヤスダツバサ(number X. CEO)
Number X, Inc. CEO/DeeTeller, Inc. CCO。デザインコンサルティングファームのWebプロデューサー・プロジェクトマネージャー・グロースハッカーとして、東証一部上場企業のオウンドメディア/Webサイト/コンテンツ制作に従事。2018年からソフトバンク株式会社の広報本部にて、副編集長としてオウンドメディアのプロジェクト・マネジメントやグロースハック、編集に従事。
・X:@283_oj
・note:https://media.number-x.jp/
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文:ヤスダツバサ(Number X)

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