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【現地人に聞くベトナム🇻🇳事情】「月5万円で暮らせる」は都市伝説? ベトナムの物価変動や年収事情、生活費など、“お金のリアル”を徹底解説

日本でも名前を聞くことが多くなった国、ベトナム。
南北に細長いこの国の南部にある最大都市ホーチミン市に私は暮らしています。

文:​田渕 智(たぶち・さとる a.k.a. たぶ)
簡単に私の経歴を紹介すると、日本で公務員を6年半、シンガポールで日系企業と現地ローカル企業で法人営業を約3年経験しました。その後、ベトナム・ホーチミンに移住して紆余曲折を経て某日系メガバンクに転職。約2年勤務したのち独立、進出支援コンサル会社を立ち上げて2023年は5期目、ベトナム移住歴も8年目となりました。現在はベトナムの進出コンサル業と併行して、日本の会社のバックオフィスや人材採用のサポート業、ウェブライターもしています。

X:https://twitter.com/asean_nomad

私がベトナムに移住した背景や理由は「キャリアのアップデートをするため」。

ベトナム移住前のシンガポールで転職をする際の難易度が年々上がってくることを感じたため、海外で生き残るだけでなく勝ち残るために、当時(2016年)転職難易度が非常に低かったベトナムへの移住を選択しました。

ところで、皆さんはベトナムという国にどのような印象をお持ちでしょうか? ホーチミン在住8年目の私が感じてきた「ベトナムのリアル」を紹介していきたいと思います。

今後も成長が見込まれるベトナムの経済

ベトナムの正式名称は「ベトナム社会主義共和国」。
名称にも含まれているように、貧富の差のない平等と公正を目指す社会主義の政策を基本とする国になります。

ただ、実際に住んでみると、日常生活でそういった空気を感じることはあまりなく、ここ数年で世界の長者番付に名前が載るベトナム人の大富豪も登場しています。また、経済規模を表すGDPもコロナ禍中はだいぶ落ち込みましたが、2023年は5%台で上昇見込みとなっており、まだまだ経済成長が続いているようです。

コロナ後もベトナムで伸びている産業

進出コンサルに携わる私の所感になりますが、コロナ後も注目されている業界は以下のとおり。

  • サービス業(飲食、レジャー、観光業含む)

  • IT関連(開発拠点化、EC関連、スタートアップ含む)

  • 不動産(郊外へ拡大)

コロナ禍中に落ち込んだためにベトナム政府が特に回復に力を入れているのが観光業(ベトナムへのインバウンド)。国策として、ビザの緩和をしています。

  • ビザ免除期間の延長:15日間⇒45日間まで ※日本を含む一部の国のパスポート保有者

  • 観光eVisaの期間延長:30日間⇒90日間まで ※全ての国が対象

南北でくっきり分かれるベトナムの文化や趣向

ベトナムは南北に細長い国で、大きく分けると保守的な北部と新しい物好きの南部とくっきり分かれます。その理由は、1975年のベトナム戦争終結まで社会主義の北ベトナム、資本主義の南ベトナムという国に分かれていたので、この思想の違いが原因ではないかといわれています。歴史的に見ても、北部は北属期と言われる約1,000年の中国の歴代王朝の影響が強かった影響もあり、遺跡などもほんのりと中華風の建物になっています。

ベトナム人の性格や気質

一言で「ベトナム人」と括れるほど彼らの性格は簡単ではありません。

大きく分類すると、北部(ハノイ)・中部(ダナン)・南部(ホーチミン)に分かれます。私が住んでいる南部のホーチミンの人に多い人柄は、皆さんが想像する東南アジアに多い「のんびり・おおざっぱ・寛容(というよりはルーズ?)・新しい物好き」。一方で北部の人柄は南部と対極で「勤勉・真面目・厳格・保守的」というイメージです。

中部はこの2箇所のバランスが取れている人が多いです。日本人からすると、仕事だけなら北部の方、生活や遊びなら南部の方が比較的付き合いやすいと思います。

経済成長著しいベトナムは収入や働き方の移り変わりも早い

経済成長に伴い、収入が毎年増える構造ができているベトナム。そこに熱しやすく、お金に余裕ができると新しいことを始めがちなベトナム人の性格もあわさり、起業や投資を始めて生活が一変するケースもよく見ます。

人気の職種・業種はホワイトカラー

ここ数年、ITエンジニアやコンサル、銀行など、いわゆるホワイトカラーの職種が、20〜30代のベトナム人に人気です。また最近では、デジタルノマドのような働き方をしている方も増えてきました。

私の住むホーチミンのベトナム人はそもそも会社に縛り付けられるのを好まない気質なうえに、コロナ禍の期間に新しい働き方にも順応しているようで、カフェで朝から晩まで作業する若い方を見るようになりました。

ベトナムの収入事情

どこの国でも気になるお金の話、ベトナム人と日本人が現地で働く場合の収入について解説します。

① 毎年10%ペースで増える、ベトナム人の収入額

JETROの「ビジネス短信」によるとベトナム人の平均月収は2020年が550万ドン(約3.4万円*)、2021年が610万(約3.7万円*)ドン、2022年が660万ドン(約4.0万円*)と毎年10%ペースで増えています。2023年は790万ドン(約4.8万円*)になるとのベトナム政府機関の発表もあり、コロナ禍中の2020年からの4年間で約1.4倍になっています。
*2023年10月時点のVND/JPYレートを適用

ただし、この金額はベトナム全土での平均金額なので、首都のハノイや最大都市であるホーチミンでは大体30〜40%増しの月収額と予測されます。

② そして、日本人の収入額は……?

一方で、日本人がベトナムで働く場合の月収を私の実体験を例に挙げると、35歳で某日系メガバンクの現地支店在籍時は月2,000米ドル代後半ぐらいの額面給与をいただいていました(業種、業界の経験年数により金額は増減)。

「現地の人に比べたら、結構もらえるな」と思った方、この金額は額面となります。ここから個人所得税や社会保険など、額面の金額に応じて25〜40%くらい差し引かれた金額が手取り金額となります。

ベトナムに移住してみてわかった暮らしのリアル

ここからは皆さんが実際にベトナムに移住した場合、どのような生活を送るのかイメージを具体化できるように食・住・人・娯楽・物価の5項目について説明します。

「食」 日本食の選択肢も豊富なベトナムでの食生活

「海外の食生活」と聞くと、不安を感じてしまう方も一定数いらっしゃると思いますが、実際ベトナムで日本人が食事で困ることはまずありません。

ベトナム料理は色々な国の料理の中でも日本人の味覚に合う料理という評価がされていますし、、ホーチミンや首都ハノイでは、数年前からお馴染みのチェーン店を含む日本食レストランが数多く進出済みなので、料理が苦手な方でも食事難民になることは避けられます。ただし、多くの場合お値段はベトナム料理は200円~、それ以外の料理は少し高く500~1,000円くらいが相場です。

「住」 家賃が高騰してきたベトナムでの住居事情

ホーチミン市内の中心部で借りられる部屋は大きく3つに分かれます。安い順に並べると以下のようになります。

  • ベトナム人の一軒家の部屋を間借り

  • サービスアパート

  • コンドミニアム

間取りはいわゆるワンルームタイプが多く、家賃の相場は350~1,000米ドルぐらい。私が移住した2016年ころは間借りなら200米ドル台の物件、コンドミニアムでも600米ドル台の物件もありましたが、家賃の上昇により見かけなくなりました。

部屋の間借りやサービスアパートは部屋の清掃や洗濯といったサービスが家賃に含まれている事も多いですが、コンドミニアムの場合はオーナーに交渉して追加したり、自分で手配しなくてはいけない場合が多いです。

「人」 ベトナム移住後の新しい出会い

慣れない土地で孤独に生活し続けることにストレスを感じてしまう人も多いと思います。ベトナムで新しい出会いを求める場合、以下のような方法があります。

  • SNSやフリーペーパーなどでイベントやサークル活動を探して、参加してみる

  • 仕事関係のイベントに参加する

  • 一人で入りやすいバーなどに出かけてみる

  • マッチングアプリを使ってみる(ベトナム人含む外国人を探すなら◎)

基本的には待つだけでなく、自ら行動しないと新しい人間関係は築きにくいです。実際に私はフットサルのコミュニティやビジネス交流会などに参加して現地での人脈を広げ、その中から仕事面で助けていただいたことや、旅行や飲み会などのプライベートでの付き合いに発展したこともあります。

「娯楽」 東南アジアへの旅行やスポーツ、外食

  • 旅行

  • スポーツ

  • 集まって外食

…… 休日やアフターファイブの過ごし方は、正直 娯楽大国である日本と比べると見劣りはします。

ただ、旅行に関していえば、日本と異なり東南アジアの地理的な真ん中にあるベトナム、特にホーチミンからの出発であれば、週末だけでも東南アジアの主要都市への旅行が簡単にできます。

スポーツに関しては、特にベトナム人の若者に人気があるのはサッカー・フットサルです。他にはバスケットや野球、バドミントンもできる場所やサークルが比較的簡単に見つかります。

「物価」 しっかりと上がっている、物価や生活費

ベトナムで生活する場合の金額をベトナム人と日本人の場合で比べてみましょう。

ベトナム人の支出額

ベトナムの労働者・労働組合研究所の調査によると、2023年の第二四半期のベトナム人の平均月支出額は1,170万ベトナムドン、日本円で約7万円となっています。前年同期比で17%の上昇、支出額の70%を食費が占めているとの調査結果も出ています。

私の知人のベトナム人に聞いても「ここ最近、明らかに色んなものが値上がりしてる」と口を揃えて言っていますが、消費者物価指数のデータで見ても毎年4%程度上昇しています。

日本人の支出額

先ほどベトナム人の平均月支出額が約7万円とお話しましたが、日本人がこの金額で生活するとなると、できないことはないが制約が多くなりストレスを感じると思います。

現地の日本人との交際なども考えると、大体月に15~20万円程度の使う生活であれば、あまり制約もストレスも溜まらずに過ごせるでしょう。ちなみに、私は直近3か月の支出を調べたところ、平均して月に13万円程度でした。

まとめ:ベトナムの魅力は「国の成長性」や「アジアから見た日本の再発見」

以前はインターネットで検索すると「ベトナムなら月5万円でプール付きのコンドミニアムに住める」「ベトナムなら1カ月5万円以内で暮らせる」と謳ったブログなども散見されました。

2023年現在、円安と経済成長に伴う物価上昇で、プール付きコンドミニアムに住みたいのであれば月に約10万円はかかりますし、1カ月5万円以内での生活はベトナム人でも難しいのが現実です。

でもベトナムの魅力は物価の安さだけではなく、成長している国の勢いを感じられることや日本にいたら分からない『アジアから見た日本』という別角度の視野を身に付けられることにあると思います。

また、一見平和に見える東南アジア地域の中でも、ベトナムは対中国で歴史的背景から対立構造にあり、南シナ海では日本と同じように中国との間に領有権問題を抱えている複雑な事情があることも忘れてはいけません。

この記事が皆さんのベトナムのリアルを知るきっかけになれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

写真・文:田渕 智
編集:車 俊治(Kuruma)、ヤスダツバサ(Number X)

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