見出し画像

【現地人に聞くタイ🇹🇭事情】世界一不平等な国!? 女性の結婚事情からラーメンの価格まで、文化・社会・経済のリアルを解説

「サワディーカー!」

これはタイ語で〝こんにちは〟という意味です。

「微笑みの国」と呼ばれる東南アジアのタイ。
インドシナ半島中央部に位置し、ミャンマー、マレーシア、カンボジア、ラオスと国境を接するこの国は、東京から首都バンコクまで飛行機でおよそ5〜6時間で行ける距離にあります。〝親日国〟と呼ばれているので、皆様の中でも人気の高い旅行先として、身近な存在かもしれません。

今回はタイを〝文化〟〝社会〟〝経済〟の3つのテーマで「こんなタイ、知らなかった!」という情報をご紹介したいと思います。

神 真理子(じん・まりこ)
新卒でラジオ局、新聞社を経たのち結婚を機に2022年4月よりタイへ移住。現在は独立し、タイ・バンコクから日本の仕事をフルリモートでこなす日々、時差が2時間あるため7時より勤務開始、毎日が〝早起きは三文の徳〟状態です。

コロナ真っ只中に私がタイに移住した理由

家の近くのベンシャシリ公園

私が海外生活を開始したのは2021年10月、シンガポールが始まりです。当時のシンガポールはコロナに対する規制が厳しく、街はロックダウン状態でした。

普通に生活することがままならない状況が6ヵ月続いたある日、夫から「来月からタイに住む!」という報告を受けました。

当時、タイは東南アジアの中でも新型コロナの感染拡大による経済の影響を鑑みて、新型コロナに対する規制を緩和した直後でした。シンガポールと比較しても、外国人の入国や居住、就労に対して、比較的柔軟性のある対応に心が安らいだのを今でも覚えています。

【社会編】良くも悪くも日本人がいっぱい

タイの日本人在住者は約8万人。

特にバンコク屈指の日本人街「プロンポン」は、道で日本人とすれ違わない日は1日もありません。日系のスーパーマーケット・ドラックストアや予備校、日本食レストラン、また日本人通訳のいる病院が数多く見られます。日本人コミュニティも他の国に比べると大きいと思います。

バンコクは海外にいながら日本にいるときと同じ生活ができるので、初めての東南アジア生活する国としてオススメの選択肢です。

一方でコミュニティが充実しているため、語学力を高め、現地の人とコミュニケーションを取り、カルチャーを学ぶという観点ではかなり能動的な行動が求められます。タイは習い事も多いので積極的に参加してみるのをオススメします。

不動産賃料はピンキリ。賃貸契約時の注意点も

ハイグレードなコンドミニアムは驚くくらい高い一方で、エリアやコンドミニアムのグレードにこだわらずに探せばリーズナブルな部屋は見つかります。

相場に関しては日本と同じクオリティを都心部で望むなら日本の賃料水準と同等と考えておくとよいと思います。1点違うとしたら、部屋のクオリティは同じでもファシリティが違います。この水準のマンションであればマンション内にプールとジムがついている場合が多いでしょう。

賃料推移に関しては、新型コロナからのタイ経済の回復に比例して上昇傾向にあります。

家賃より気にすべき点は、日本には「借地借家法」などの賃借人保護のルールが存在しますが、タイには同法のような賃借人保護のための特別法は存在しないので、契約書をしっかりと確認しないと借主が不利になる契約をしているケースがあります。

しっかりと契約書を確認し、自分に不利がないか確認することがマストです。私の経験上、確認しておくことは2点。

  1. 貸主側から賃貸契約期間中に部屋の退去を申し出した場合の保証金の有無

  2. 部屋の付帯設備に故障が生じた場合に修理費負担を貸主と借主のどちらが持つか

1について、たとえば1年契約の部屋にもかかわらず、半年経過後、オーナーが借主に対し急に退去を申し出た場合、借主はオーナーに従うしかありません。その場合の引っ越し費用や、オーナーサイドの違約金の支払いなど、契約書に載っていない場合はぜひ不動産会社の方と交渉してみてくださいね。

どんなときでも「マイペンライ!」

タイ人は「マイペンライ」という言葉でなんでも受け流します。マイペンライは「大丈夫」「気にしない」「どういたしまして」という意味。

慣れない海外生活の中、この言葉にどんなに救われたことか! 「いろいろ考えてみても仕方ない! 流れるままに、その中で頑張っていこう」と何度も気持ちを立て直すことができました。

一方で、悪い一面も。
「マイペンライ」がすぎて約束や時間にルーズなこともしばしば。

例えば、英語のレッスンを講師が当日キャンセルしても「マイペンライ」。
デリバリーで頼んだカレーがこぼれまくっていても、こぼした張本人が私に対して「マイペンライ!」と笑顔を向けてきます(笑)。

なぜこんなに時間や約束にルーズなのか。これは個人的な見解ですが、タイの交通渋滞と季節性にあると思っています。

まず、「交通渋滞」。タイは世界の渋滞都市ランキングでワースト1になったこともあるほどです。距離によっては、車に乗るより歩いたほうが早い! ということも。これは交通量に対して道路が未発達で抜け道が少ないこと、警官による手動式の信号機が多いことなども考えられます。

次に「季節性」。6〜10月は雨期で、この時期は1日に1〜2回、バケツをひっくり返したようなスコールが降ります。この2つの要因がかけ合わさると、突然のキャンセルや遅刻に関する受け入れ態勢が強くなります。日本人の私ですら約束や時間厳守の概念が薄れてくるのです。

とはいえ、お仕事を一緒にする際は、納期が間に合わないケースは起こりやすいとのこと。仕事の進捗管理に苦労している日本人の方を多く見かける印象です。

また、プライドが高い民族ともいわれています。例えば、優秀な部下が仕事でミスした際に注意をしたら「プライドが傷つけられた」といって退職してしまうケースも。これはタイは東南アジアで唯一植民地化を免れた国であり、これに対する誇りが由来しているのかもしれませんね。

【文化編】性的マイノリティに開かれた社会。女性が結婚相手を見つけるのは至難の技!

「タイには18種類の性別がある」などという嘘のような本当の話があります。生活の中で自然といろいろな性別を持った人とコミュニケーションをとることが多く、自然と「男たるもの」や「女性なんだから」という概念が薄れて来る気がします。

タイ人の女性と恋愛や結婚についての会話で笑ってしまったエピソードをご紹介。

ある日、タイの女性から
「マリコ、タイ人女性が結婚相手を探すのは本当に大変なの。なぜだかわかる? タイの男性の25%が僧侶で結婚はできないし、残りの25%は性的マイノリティの人、残りの25%は仕事をしていないし、12.5%は刑務所にいる。残りの12.5%から結婚相手を探すのって、すごい競争倍率でしょ?」

あくまでもお酒の席の話ですので盛っている部分はあると思いますが、笑って話す彼女を見て、誰もが性別問わず、好きな服をきて、好きになった人を好きになる。そして周りの人間も多様性を受け入れて互いに助け合いながら生活できる人が多いと感じた笑い話でした。

【経済編】世界一不平等な国!? タイの経済事情

知人にタイに住んでいると話すと「いいな~、物価は安いでしょ?」と聞かれることも多々。タイの首都バンコクに住んでいる日本人としての答えは「NO」です。うどんを注文すれば約1,200円、ラーメンも1,000円以上のコストがかかります。つまり物価は日本と同じ、もしくは日本より高いと感じる場面のほうが多いのが実情です。

ただ、この「NO」という回答は首都バンコクに住む日本人が、日本と同じ生活水準を保とうとした場合に限ります。

郊外に行けば、物価の安さを確実に感じることができます。実は、タイは2018年にスイスの金融機関クレディ・スイスが発表した統計で、人口の1%が66.9%の富を所有する「世界一不平等な国」「世界一の格差を抱える国」と発表されました。

その理由の一つとして、驚くことにタイには2016年まで相続税がありませんでした。(現状でも4億円未満の相続金額は非課税。※1バーツ4円計算)。また、固定資産税も農業用の土地建物で0.15%、居住用の土地建物で0.3%以下、商業用等のそれ以外の用途については1.2%以下と日本と比較し驚くほど安いです。

富裕層は生涯富裕層、貧困層はなかなか負のループから抜け出せないのが実情です。

タイの富裕層って一体どんな人?

コロナで入国が制限されていたときでも、時折 シャネルやDior、エルメスに列ができるタイ。一体どんな人が富裕層なのでしょうか?

その答えは「財閥」
タイでは複数の財閥が存在しており、各財閥が様々な分野で企業活動を行っています。タイは典型的な華人経済であらゆる産業が財閥企業によって支配されています。

財閥は大きく分けて2種類あり、華僑系財閥と王室系財閥。対主要財閥は7つあり、うち5つが華僑系財閥です。タイ最大のコングロマリットは華僑系財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループです。世界21カ国、8分野の事業(農業・食料品・小売・卸・メディア・通信・Eコマース・不動産・自動車・工業製品・医薬品・金融)を展開し全従業員数は約30万人、グループの総売り上げは約7兆円にも及びます。

日本の企業だと伊藤忠商事との業務提携を行うなど、事業拡大を積極的に推進しています。こんなお金持ちに2016年まで相続税がなかったなんて……! 日本では信じられません。

タイ人に人気の就職先はもちろん財閥系企業、その他銀行やIT業界が人気のようです。

気になるタイの年収事情は、これまた千差万別

タイ国家統計局によると、2021年のタイの平均月収は27,352バーツ(約106,525円)、年収にすると328,224バーツ(約1,278,304円)です。一方で、2023年4月29日の東洋経済オンラインには「日本の部長は〝タイより年収が低い〟の衝撃的事実」という記事が掲載されています。ですので業界、語学力やポジションにもよるというのが正解でしょう。

タイに住んだら定期預金をしてみよう

タイに住んだら週末はバンコクを中心にプーケットやサムイ島へ行ったり、ゴルフを楽しんだりしたいな、と思っている方。ストップ、ストップ、ストップ!!!

その前に銀行へ行って定期預金口座を作ることをオススメします。最近、バンコク中央銀行は積立定期預金2.5%と過去10年で最高の設定をしました。その他、銀行も日本と比較し中々好条件の金利を提示しています。

バンコクライフを楽しみながらしっかり貯金もいいかもしれません。

まとめ:カオス溢れる国を怯むことなく楽しんで

私がタイを一言で表現するなら〝カオス〟です。

国民の95%は仏教徒。都市部であっても朝、僧侶が列をなして托鉢をし、家々からの外で食事や食料を鉢に入れ、僧侶の祝福を受けるタイの人々の様子をしばしば目にします。また、僧侶でなくとも〝徳を積む〟ことを重んじている人も多く、基本的に奉仕の精神が強い側面を垣間見ます。

そうかと思えば、人々の欲望渦巻く夜の顔も持っています。街では貧困層の人が寄付を募っていると思えば、富裕層がエルメスやシャネルに列をなしています。金曜日にルーフトップバーでお酒深夜までお酒を飲んだと思えば、ゴルフで週末を健康的に過ごしたり。

私は移住してからゴルフをはじめ、週末はゴルフを楽しんでいます。

最初は刺激が強くて戸惑うこともあるかもしれません。しかし、いろいろな刺激に触れることで、自分が何に楽しさを感じるのか、自分が何をしたいのか明確になってくると思います。

この国の楽しみ方は十人十色です、いろいろな選択肢が待っています。タイに来たらこのカオスを思う存分楽しんでくださいね!

写真・文:神 真理子
編集:ヤスダツバサ(Number X)

▼他の国の◯◯事情はこちらから


この記事が参加している募集

X(Twitter)でもたまに情報を発信しています。ぜひフォローしてあげてください!