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【現役広報が教える】企業広報とプロスポーツ広報の違い。メディア特性や記者のスタンス、距離感まで

広報といえど、業界によってメディアリレーションやコミュニケーションの取り方はまちまち。

今回は、東証プライム上場企業に新卒で入社した後、社会人人生を広報畑で過ごし、現在はプロスポーツ広報として勤務している私の経験から「企業広報とプロスポーツ広報の違い」について解説します。

スポーツ業界にゆかりはなくても、業界ごとの違いのクセを掴むヒントになればさいわいです。

本記事の執筆者:H・M
2017年に大手通信キャリア会社に入社。BtoCサービスの広報として、プレスリリース作成や取材対応、会見対応に従事。新料金プランや5Gサービスの発表など新規案件をメインに担当し、年間150本以上のプレスリリースを作成。また、入社時からロボット関連事業のプレスリリース作成や取材対応、会見対応の他にリスク管理やコーポレート広報の仕事も経験。2022年4月からは新規スポーツ事業に関する広報業務を行っている。


企業広報とプロスポーツ広報の違いとは?

同じ広報といっても企業広報とプロスポーツ広報はメディアとの関係性をはじめ、大きく違います(私も最初はここまで違うのかと戸惑いました)。この違いは広報業界で仕事をする際に非常に役立つと思いますので、ご紹介します。ぜひ同じ業界やメディア関係者と会う際のネタにもしてください。

▼こんなあるあるネタもあります。

①メディア特性や記者の所属部署:リスク案件では企業広報は“社会部”、プロスポーツ広報は“「〇〇砲」”

広報に従事する方なら、自分の企業を取材してくれる「メディアの種類」や「記者の所属部署」を気にしてコミュニケーションを取っている人は多いのではないでしょうか。メディアといっても、TVや一般紙、地方紙、専門紙、週刊誌など、さまざまな媒体があり、TVは企業広報とプロスポーツ広報の共通しています。

▼企業広報が関わる記者の所属部署

  • 通常取材:経済部や生活部など

  • リスク案件の取材:社会部

一般企業の広報は、一般紙や地方紙、専門紙からの取材をメインとして調整を行い、場合によって週刊誌や月刊誌の取材を受けることが多いです。さらに、記者で分類すると主に経済部や生活部など、不祥事などのリスク案件が発生した場合などは社会部に所属する記者からの取材を受けると思います。

▼プロスポーツ広報が関わる記者の所属部署

  • 通常取材:スポーツ部

  • (特例)リスク案件の取材:「〇〇砲」などを発する週刊誌

一方、プロスポーツ広報がメインで取材してもらうのはTVを除くと、スポーツ紙がほとんどの割合を締めます。また、取材を受ける記者はほぼスポーツ部に所属しています。そのため、プロスポーツ広報はスポーツ部の記者とのやり取りがほとんどといっても過言ではありません。特例として、選手が不祥事などを起こした場合などは「〇〇砲」などといわれる週刊誌の記者とやり取りをすることもあります。

②距離感:まるで同僚? プロスポーツ広報は記者との距離感が圧倒的に近い

企業広報とプロスポーツ広報はメディア・記者との距離感もかなり違います。企業広報が記者と合う場所といえば、商品・サービスの発表会や決算会見、インタビュー取材の場などだけであって、普段のコミュニケーションはメールや電話でされている方が多いと思います。私も実際企業広報で勤務していた際はそうでした。

しかし、プロスポーツ広報とメディアの距離感はかなり近いのが特徴。プロスポーツのホームグラウンドには必ず記者室があります。記者室は記者が自由に使って良い部屋のため、試合がない日でも、ちょっとした情報を収集しようと記者室に通っている記者が多いです。

そのため、プロスポーツ広報と記者はほぼ毎日顔を合わせています。毎日会って会話する仲なのでかなり距離感が近く、私も現場に異動した際は距離感の近さに驚きました。まるで同僚かのような距離感で接することができるため、取材の依頼やこちら側からのお願いが立ち話で決まることも少なくありません。

ただ、近すぎるためいろいろ大変なことも…… それはまた別の機会に紹介しますね(苦笑)。

③スタンス:企業広報の記者は“ニュートラル”、プロスポーツ広報の記者は“三方良し”

メディアとの距離感がプロスポーツ広報の方が近いということは先で説明しましたが、スタンスも正反対。

企業広報とメディアの関係は非常にニュートラルで良くも悪くも正直です。自社の商品やサービスに対してメディアが評価すればポジティブな記事が出て、評価されなかったらネガティブな記事が出ます。そのため、メディアによって賛否が分かれることもよくあります。

その一方、プロスポーツ広報とメディアは協力関係という表現が正しいでしょう。プロスポーツチームもメディアも共通していることは「出した情報で地元やファンに喜んでもらいたい」ということです。メディアからこういう企画をやりたいので、選手に取材させてほしいという依頼がよくくるのですが、我々からもこのようにしたらもっとよくならないかと提案するということがあります。

企業広報では企画に口出しするなんてまずないですよね。しかし、プロスポーツ広報とメディアの間ではよくあるやり取りなんです。そして、メディアと協力して作り上げたものは「三方良し(球団・メディア・ファン)」の記事として世の中に出されます。

このスタンスの違いは企業広報からプロスポーツ広報に異動してきて、一番驚いたことかもしれません。

報道時の取材手法・エビデンスの取り方も違う

メディアは「取材を元に正しい情報を正しく報じることが使命」ということは皆さんもご存知だと思いますが、個人的にはこの前提の上、かなりそれぞれの業界で報じ方が違うと感じています。

例えば、一般企業の商品・サービスについて記事にする場合は、商品・サービスに関する情報を事細かく担当者や広報に取材し、エビデンスをはっきりさせてから記事を公開します。

ただ、プロスポーツを取材する記者はあらゆる関係者に聞いて記事にします。そのため、エビデンスが関係者の曖昧な発言になることもあります。その結果、記事内容が間違っている、もしくは一部事実と違ういわゆる「飛ばし記事」「推測記事」が出ることがあり、それは企業広報をしていた頃に比べて多く感じています。

また、プロスポーツ広報あるあるなのですが、スクープ記事の中に謎の「球団関係者」が必ずといっていいほど出てきます。しかし、球団組織は人数が一般企業と違い少ないため、メディアに情報をリークした人がほぼ特定できます。(もちろん犯人探しはしませんが……)

④情報の発信先:企業広報は“多岐にわたるステークホルダー”、プロスポーツ広報は“ファン一択”


企業広報はメディアを通して、誰に情報を届けたいかというと、潜在的な顧客や顧客、株主、取引先企業、従業員、求職者など、「多岐にわたるステークホルダー」に情報を発信することを目的としています。その結果、企業としてのブランド価値の向上や商品の売上アップを目指します。

その反面、プロスポーツ広報の発信先はいたってシンプル。その発信先は「球団を応援してくれるファン」です。プロスポーツ広報はメディアを通して、試合や選手に関する情報を提供してファンの興奮を高め、観客動員や視聴率向上を促進を目指しています。そのため、メディアに対するアプローチも企業広報とプロスポーツ広報では、かなり変わってくるのです。

まとめ:企業広報とプロスポーツ広報の違いを知ることで記者とのコミュニケーションもより円滑に

企業広報とプロスポーツ広報の違いを紹介してきましたが、かなり違うということが分かったのではないでしょうか?

ただ、違いを知ることによって記者とのコミュニケーションにも生かすことができます。記者にとって経済部→スポーツ部など、全く取材範囲が変わる異動は不安が大きいです。その不安を抱えた記者に対して、違いを理解しながら記者と接することは、記者にとってかなり心強いと思います。

そのような状況からコミュニケーションを取ることで、記者からより信頼してもらえる関係性が築くことできると思うので、ぜひこの違いを理解して記者と距離を近づけてみてください。

文:H・M
編集:ヤスダツバサ(Number X)

▼現役広報直伝のノウハウまとめ


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