【現地人に聞くアメリカ🇺🇸カリフォルニア事情】アメリカの給料は高いって本当? カリフォルニアの文化や年収、物価事情
カリフォルニア、それはアメリカで1番人口の多い州であるのと同時に、在留邦人数が世界一多い都市、ロサンゼルス(64,457人/2023年10月1日現在*1)をもつ州でもあります。
古くから日本人にとって、馴染みのある海外の1つで、最近では元ロサンゼルス・エンゼルスで活躍された野球の大谷翔平選手が、同じくロサンゼルスにあるロサンゼルス・ドジャースに移籍されたことも大変大きな話題となりました。
(ちなみに、エンゼルスはロサンゼルスのお隣、オレンジ郡にあるので、現地人的はロサンゼルスではないと言っています)
そんな身近なカリフォルニアですが、実際には住んでみなければ分からない数々の出来事があるのもまた現実です。今回、筆者がカリフォルニアに移住してわかった、ウワサの真相やリアルライフについて、ズバリ、本音を語りたいと思います。
その昔、太平洋を渡った日本人たち。いまも多くの日本文化が残るカリフォルニア *2
冒頭に触れた在留邦人というのは、アメリカに住みながらも国籍は日本人ですが、日系アメリカ人と言われている人たちは、日本人の血を引くアメリカ人のことを指し、国籍上はアメリカ人になります。
筆者の主人の家族は今から100年以上前に日本からカリフォルニアに移住した日系アメリカ人ファミリーで、義母は第二次世界大戦中、日系人強制収容所で生まれました。戦後も貧しい生活を強いられながら、一家の長女として幼い弟3人の面倒をみてきたという、生粋の日系カリフォルニアンです。
カリフォルニアはスーパーをはじめ、日本文化が深く浸透していて、都市部であれば大抵の日本食材や日用品、日本人向けの学校、病院、美容院など簡単に見つかります。大体どこのショッピングモールに行っても、SUSHIやRAMEN、JAPANESEの看板をもったレストランが1軒はある位。カリフォルニアは海外ですが、日本文化が定着した日本人にとって確実に生活のしやすい場所だといえます。そしてまた、世代を越えて暮らしてきた日系アメリカ人にとっても、カリフォルニアは日本文化を継承し続けてきた、歴史が深く刻まれた場所でもあるのです。
アメリカの給料は高いって本当? 現代を生きるアメリカ人は超絶“ファストライフ”
最近、日本の友人から
「アメリカは物価も高いけど収入も高いんでしょ?」
とよく聞かれますが、
「いやいや、お給料じゃ全然カバーしきれないよ!」
というのが私の決まった回答。
まず、日本で生まれ育った筆者にとっては、何もかもが壊れやすく、修理やメンテナンスにかかる費用が半端ではありません。車1つを例にしても、今年だけで次のような出費がありました。
高速道路で前の車から飛んできた小石で割れたフロントガラスの修理(しかも2回)
駐車場に車を停めていたら突如、松ぼっくりがフロントガラスを直撃。割れて修理(運悪すぎ)
子供が水筒を振り回してドアを凹ませ、塗装がハゲた部分を修理(完全な不注意)
停車していたら車を当てられ、修理(保険適用)
とにかく車社会で、走行距離は2年で40,000km超え。道路事情も悪く、タイヤ交換(道路に穴多すぎ)
1ヶ月のガソリン代は2台で90,000円($600)以上
これ、車関連だけです。住宅も非常にランニングコストがかかり、水回り、排水関係のトラブルは毎月の恒例行事のようです。また、ご存じの通り医療費が高額で、保険適用しても虫歯治療1回に30,000円かかる。
託児所は月30万円近くするところもあるようです。このような事情から、ニュースではアメリカの最下位20%の労働者の所得は上がっているにもかかわらず、支出の80%を食料品などの基本的な必需品だけで精一杯の暮らしを余儀なくされている、というのが現実なのです*3。
何かが壊れても(体の不調も含めて)これらに回せるお金など到底ありません。また、アメリカ世帯の約60%がPaycheck to Paycheck(給料が入ったら、そのまま全額支払いに渡る、綱渡り生活)の生活をしていると言われています。
国民の半数以上が綱渡りの生活だなんて、日本では考えられないですよね? ですから、多くの人はスローライフとはほど遠い、ファストライフを余儀なくされているのが現実です。では、このカリフォルニアで“普通の暮らし”をするには、一体いくら位の給料が必要だと思いますか?
今、カリフォルニアで最低限の生活をするために必要な給料とは?
皆さんは、リビングウェイジ(以下、LW)という言葉をご存じでしょうか?
労働者が最低限の生活を営むのに必要な賃金水準を試算したもので、「この金額なら生きていくために“最低限”の生活はできる」というレートのこと。日本では、連合(日本労働組合総連合会)が算出しています。
ちなみに、2023年現在 東京都の最低賃金が1,113円なのに対し、東京のLWは1,270円なので、87.6%カバーできています*5。一方、カリフォルニアは最低賃金が$15.00(約2,160円)なのに対し、一人当たりののLWが$21.24(約3053円)なので、70.6%のカバー率。
確かに、カリフォルニアは東京と比べても時給が2倍近く高いのですが、生活の苦しさはカリフォルニアの方が高いことが伺えます。さらに4人家族の場合、カリフォルニアのLWは$27.42(約3,950円)まで上がるので、最低賃金でカバーできる率は54.7%となります*6。ですから、一家4人で最低限の生活をするには45.3%分の給料が不足しているのです。まだまだ“普通の生活”ができない家庭が多いことがわかります。2024年1月から最低時給が$16.00(2,300円)に引き上げられます。
それでもカリフォルニアの魅力を語らずにはいられない!
現在のカリフォルニアの暮らしをデータ上で見ると、豊かで余裕のある人は決して多い訳ではないことが分かりますし、多くの課題が残されていることも明確です(アメリカの選挙が白熱するのも納得ですね)。
しかし、カリフォルニアには多くの魅力があることも確かです。以下は、現地人である著者の完全に主観に基づいていますが、カリフォルニアの良さを4つ、挙げてみました。
① 地球を感じる、豊かな自然に囲まれた美しい街
私が住むサンディエゴはもとより、カリフォルニア全体的に年間を通じて温暖で、車で西に走れば大海原の太平洋、東に走ればシエラネバダ山脈があり、世界遺産(自然遺産)に指定されているヨセミテ国立公園やセコイヤ国立公園など、実に9つの国立公園があります。全米の中で1番国立公園の多い州がカリフォルニアで、大自然を通じて、身近に地球を感じることができることは、カリフォルニアに在住していて良かったと思うことの1つです。
② コンピューターおばあちゃんは実在する? テクノロジーが浸透している
カリフォルニアには多くのIT企業が集まるシリコンバレーがあり、最先端のITやテクノロジーが発展していて、生活に密着しています。例えば、子供が通う中学では、テストは全てパソコンで行い、紙と鉛筆で受けるテストはありません。
また、病院の問診票も紙ではなく、オンライン。免許を取得する際の筆記テストも数年前から「MVプロクター」と呼ばれるオンラインテストで、自宅から受験することが可能となりました。利用者にとってテクノロジーが便利なだけでなく、オンラインにすることで、慢性的な人材不足の解消にも役立っているようです。ちなみに、若者だけでなく、カリフォルニアのシニア世代もテクノロジーに強く、コンピューターおばあちゃん・コンピューターおじいちゃんが多数います。
③ イッツ・ア・スモールワールド! 多様性を感じられる、ここはカリフォルニア
「アメリカは世界の政治変動や紛争を身の回りのできごととして意識させる国だ」と、前UN難民長官の緒方貞子氏の言葉があるように、カリフォルニアは多様性に溢れ、子供達が通う学校を通じても、世界の縮図を感じさせられます。
ウクライナ情勢がはじまればクラスメイトのウクライナ人とロシア人の子供達が口論をはじめ(その後、必ず学校側のフォローがあります)、イスラエル情勢がはじまれば、イスラエル人の友達のお兄ちゃんが徴兵で年末イスラエルに戻ることになったなど、日本では遠い国の話も、ここでは肌で感じながら生活をしています。
ときに、それらを直面する子供達にとっては辛い現実を見ることもあるかもしれませんが、多感な時期に多様性に触れた生活をすることは、悪いことばかりではなく、きっと将来プラスに働いてくれると信じています。
④ アメリカの胃袋はカリフォルニアの農産物が支えてる? フレッシュな農産物が美味しい
カリフォルニアは農作物が非常に豊富で、実に400種類以上の農産物があります。アメリカの野菜の約3分の1と、果物やナッツのほぼ3/4がカリフォルニアで生産されていて、カリフォルニアの農業生産高は長年全米1位を記録しています*7。今では日本のお米に負けない位、美味しいお米や野菜、果物などを食べることができるのです。
ちなみに、カリフォルニアの土地は元々農業に適しておらず、水路をひいたり、農地開拓に大きく貢献してきたのが日本人移民だとも言われています。有名なのは、ニンニクの街、ギルロイでニンニク栽培に成功し、後にガーリック王と呼ばれた平崎清さんも熊本からカリフォルニアに渡った日系人です。今でも農業が盛んなセントラルバレーに行くと、日系農家の名残を感じることができます。そうそう、リーズナブルで美味しいワインが楽しめることも、カリフォルニアの魅力の1つですね!
まとめ:パンデミック後だからこそ、リーズナブルに旅行できる、日本とも深い関係のカリフォルニア
コロナ禍の前、アメリカは「日本人が多く訪れる国・地域」のトップ*8でしたが、最新の統計によればアメリカはトップ10にも入っていない*9という残念な状況です。
これは日本だけでなく、中国なども含め、パンデミック後のアメリカへの海外旅行者の回復が遅いことを示しているようです*10。円安やインフレなど、数々の理由でアメリカ旅行が敬遠されているようですが、多くの魅力が詰まったカリフォルニアを訪れるには、アメリカ国内の旅行者が少ないゴールデンウィークやシルバーウィークなどの日本独自の観光シーズンを狙うと穴場で、かつリーズナブルに楽しむことができるのでオススメです。
特にゴールデンウィークの時期は気候が良く、アメリカの観光シーズンではないため、どこのホテルも比較的安く、予約が取りやすいタイミングとなります。
また、いつも争奪戦になるヨセミテ国立公園などの人気スポット内のホテルも通常のピーク時に比べて格段に予約がしやすいです。カリフォルニアの魅力は数多くあり、ここでは語り尽くせませんが、日本と歴史的なつながりも深いこの土地を、実際に訪れて体感してみてはいかがでしょうか。
写真・文:かさ
編集:ヤスダツバサ(Number X)
▼他の国の◯◯事情はこちらから