【現地人に聞くスペイン🇪🇸事情】サッカーと家族の間で自由を愛すラテンの国。スペインの物価や年収、働き方事情
情熱の国、スペイン。
サッカーやフラメンコなど多彩な文化があり、観光産業が盛んな国です。
海外旅行先として人気なスペインですが、実際に住んでみるとどうなのか気になる人も多いはず。そこで本記事ではスペイン生活のリアルな実態をバルセロナ在住8年目の筆者が紹介します。
大企業の安定を捨ててスペイン移住したのは、サッカーチームで働く夢を捨てられないから
スペインになんのゆかりもなかった私が、スペイン移住を決めたきっかけは「サッカー」。
「サッカーチームで働きたい」という夢を抱えながらも、サッカークラブに就職する方法がわからず、とりあえず大学進学。そのまま大企業へ入社。
社会人生活が始まって1年が経った頃、「このままサッカーチームで働く夢を追いかけないで、死ぬときに後悔しないだろうか……?」という想いが湧き上がり、まずは実績を積むためにサッカー留学を検討し始めました。
知人の紹介でまずは1週間ほどスペインへ短期留学をし、約1年後に大企業を辞めてスペインへ武者修行に出ました。元々期限付きのサッカー留学としてスペインへきましたが、新型コロナの影響で帰国が難しくなったことも相まって、現在はフリーランスとして働いています。
物価や収入… スペインのリアルなお金事情を公開
物価:2016年と比較して生活費・家賃相場は2倍近くに
スペインは都市ごとに物価が若干異なりますが、今回はバルセロナの物価を中心にご紹介。バルセロナでは近年のインフレの影響で、私がスペインにきた2016年と比べると生活費が高騰しており、家賃の相場は2倍近く上がりました。
スペイン生活にかかるコストの例
家賃(一人暮らし):シェアハウスの一室を借りて400〜800€(約6.5〜13万円)、単身用アパートを借りるなら800〜1,200€(約13〜20万円)程度
外食費:ランチメニューで15〜20€(約2,500〜3,000円)、ディナーは20〜40€(約3,000〜6,500円)程度
食料品:トマトは1.5〜2.5€/kg(1kg当たり約250〜400円)、お魚(マグロ)は20〜30€/kg(1kg当たり約3,000〜4,900円)
医療費:公立病院であれば無料(ただし歯科は10割負担)
通信費:10〜15€(約1,600〜2,500円、SIMカード月額利用料)
※1ユーロあたり163円で算出
ちなみにインフレがピークのときは、トイレットペーパーが1パック(12ロール)で8€(約1,300円)したこともありました。今は落ち着きましたが、それでも6€(約1,000円)前後します。
収入:年収は15,876€(約259万円)、月収2,000€以下が多い
スペインの最低賃金は月額1,323€(約22万円、12回払いの額面金額)、年収にすると15,876€(約259万円)。スペインでは給与を年に14回払いで支給する会社もあります。
その場合は毎月の給与支払いに加えて、夏のバケーション前に1カ月分、クリスマス前に1カ月分を追加で支給します。年収を14回に分けるだけなので、総支給額は変わらず、最低賃金は月額1,134€(約19万円)になります。
また、国家統計局が出した最新のデータによると、スペインの平均月収は2,128.4€(約35万円)、年収にすると25,540.8€(約416万円)です。実態に近いとされる月収の中央値は1,814€(約30万円)。
※いずれも額面の金額
統計からも分かるように現地在住者の体感では、月収2,000€に満たない人が多いのが現状……。また、出世をしない限り昇給はほとんどないので、勤続年数が長い人や年配の人、入社したばかりの若者でもみんな一律のお給料をもらうのが当たり前になっています。
国民性から見えてくる、スペインの文化と働き方
文化:家族が第一! 朝からお酒も当たり前の日常
スペインでは家族との時間が第一で、週末は家族みんなで集まって食事をすることが定番。日曜日は家族との時間が優先なので、スーパーをはじめとした色んなお店が閉店しています。
また、スペインではお酒が非常に身近にあり、お昼ごはん前に軽くビールを1杯飲むのも日常茶飯事。それもなんと週末ではなく、平日の仕事中にも! お酒を少量飲んで車を運転している人も多く、実際に検問に引っかかっても少量のお酒であれば問題なし。
日本でよくある運転代行サービスは、スペインでは見たことがありません(笑)。
働き方:週休2.5日制? ヨーロッパの中でも高い失業率の実態とは
スペインの会社は金曜日の午前中まで働いたら、午後は休みにしていることも珍しくありません。金曜日の午後は週末のためにあまり働かない傾向があり、用事で手続きや申し込み関係をしても週明けに回されることが多いです。
職種にもよりますが、残業はほとんどありません。家族との時間を大事にするため、プライベートの時間を犠牲にして会社のために働く人はかなりの少数派。その分会社都合で時間外に働いた場合は、残業手当が手厚いのも特徴です。
スペインで暮らしたい人にとって気になるのが就職事情だと思いますが、
は12.9%とヨーロッパの中でも非常に高く、仕事探しには苦労します。特に若年層失業率は29.8%で、16〜24歳の約3割は働きたくても働けません。仕事先が見つからないから学校に通う若者もたくさんいます。コネがものをいう世界なので、人との繋がりはかなり大切です。
ただ失業率が高い背景には、仕事がないからという理由だけではありません。スペインでは雇用契約終了などで職を失うと、失業保険でお金をもらえる期間を最大限利用して休暇を取る傾向があります。つまり、1〜2年失業中のままゆっくり過ごし、保険が切れそうになったら仕事を探す。失業者が多い原因は、できるだけ働きたくない国民性も関係しているのかもしれません。
やっぱりサッカー? スペイン生活のイチオシポイント3つ
ヨーロッパで人気の過ごしやすい気候
スペインの中でも特にバルセロナは暑すぎず寒すぎず、非常に過ごしやすい気候です。ヨーロッパ各国から魅力的な地中海性気候を求めて、移住してくる人もたくさんいます。干ばつが問題になってしまうほど雨が降らないので、バルセロナでは傘はほとんど使いません。
フレンドリーな国民性
スペインではたまたま出会った知らない人にも、気にせず話しかける文化があります。
スーパーや市場で買い物をしているとき
病院で順番待ちをしているとき
バルで飲んでいるとき
など……
友達が近くの人と話していて、つい「知り合いなの?」と聞いてしまうこともよくあります。
特にバルでサッカー観戦中は、お店にいる人みんなが仲間のような感覚で盛り上がるので楽しいですよ。
また愛情表現が強いラテン人ならではの国民性ですが、知らない人でも関係なく「グアパ(美人さん)」「イハ ミア(私の娘)」などと呼びます。今となっては慣れましたが、スペインにきた当初は道行く知らない人や店員さんなどから可愛い子ちゃん呼ばわりされてびっくりしました(苦笑)。
サッカー好きにはたまらない環境
スペインといえばサッカーに熱いイメージがありますよね。これはイメージ通りで、街を歩いているといたる所にサッカーグラウンドを見かけます。どのグラウンドも人工芝や天然芝で、観客席やバルが併設。サッカークラブもたくさんあり、サッカー好きにはたまらない環境なのです。
リーグ戦がある週末はサッカーの試合が終わった子ども連れの家族から、おじいさんおばあさんまで老若男女、お家や近所のバルで試合観戦しています。FCバルセロナの試合があるときは、ご近所さんの騒ぐ声で点が入ったことがわかるほどですよ。
まとめ:家族と自由、サッカーを愛すラテンの国。スペインは何気ない日常を楽しませてくれる街
スペインでは個々人が型にはまらず自由に生活し、何気ない日常を家族と楽しむことができます。特に日本人と正反対ともいえるようなラテン系の明るい国民性は、カルチャーショックもたくさんあり、毎日が新鮮な日々です。時間がゆったりと流れるスペインを一度訪れて、昼間からバルでお酒をゆっくり楽しんでみてはいかがでしょうか。
写真提供・文:Mayu Abe(ほぺまゆ)
編集:ヤスダツバサ(Number X)
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