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【現地人に聞く台湾事情】思いやりとチャレンジ精神に溢れたコンビニ大国。台湾の文化や年収、不動産事情

ここ数年、人気旅行先ランキングでは必ず登場する台湾。日本からは飛行機で約3時間と近く、美しい自然景観はもちろん、おいしい食べ物に溢れ、フレンドリーで優しい人々が多いなど好意的な印象を抱いている人も多いはず。なかにはその魅力に惹きつけられ、台湾通いを続けるようになってしまったというファンも少なくありません。

近年はコロナ対策で迅速かつ徹底した対策が行なわれ、国民が一丸となってコロナ禍に向き合ったことでも話題になりました。特に、デジタル担当大臣のオードリ・タン(唐鳳)の活躍ぶりも頻繁に取り上げられました。

さらに2022年度には国の豊かさを表すとされる一人当たりの名目GDPでは韓国を抜き、日本に逼迫する勢いになるほど。TSMC(台湾積体電路製造)など、世界的なシェアを誇る半導体メーカーの躍進でも注目されています。こういった先進的な側面が目立つ一方、街には昔懐かしいノスタルジックな雰囲気が感じられます。

筆者が台湾でお世話になってから約20年。振り返ると、あっという間の歳月でした。現在は雑誌や書籍などで台湾情報を発信する仕事をしています。台湾生活の中には心地よい刺激が詰まっており、充実した毎日を送っています。

文・片倉真理
台湾在住ライター&コーディネーター。雑誌や書籍の執筆・企画などに携わる。著書に『台湾旅人地図帳」『台湾探見』(いずれもウェッジ)など。雑誌『&Premium』の連載「&Taiei」は丸5年を迎える。「CREA Web」でも台湾土産に関する連載をもつ。現在は台北在住ですが、いつかは南部に暮らしてみたいと夢を馳せています。
・Instagram:@marikatakura
・X:@formosamari


移動が便利! コンパクトな都市、台北

台湾島の面積は九州よりもやや小さい程度で、人口は2,342万人。筆者が暮らすのは台北(タイペイ・たいほく)市。市域面積は約272平方キロ。市街地は東京でいえば、山手線の内側に収まる程度となっています。

市内交通は充実しており、MRT(都市交通システム・地下鉄)やバスの路線が縦横無尽に張り巡らされています。どこに出かけるのも便利で、街も機能的な作りとなっています。市内間の移動はほぼ30分以内で可能です。

時間的なロスが少ないこともあり、日本にいたときよりも自由に使える時間が増えた気がします。また、急なお誘いがあってもスムーズ、かつコンパクトに行くことができるので、フットワークが軽くなり、こまめに対応できるのもありがたいところです。

シェアサイクリングの「You Bike」。乗り心地の良い自転車です

ちなみに街歩きの際には「You Bike」というシェアサイクリングを活用しています。これは到る所にスタンドがあり、しかも30分5元(約20円)という安さです。リバーサイドには自転車専用道路もあるので、休日にはのんびりとサイクリングを楽しんでいます。

コンビニが立ち並ぶコンビニ大国。便利すぎる街?!

ナイトマーケットは各地に点在し、遅くまで賑わっています。深夜に子どもたちが遊んでいることも!

現在、台湾には在留邦人が約2万人いるといわれています(旅行者・留学生を含む)。日本企業も数多く進出しており、「UNIQLO」や「無印良品」、「大戸屋」、「すき屋」、「くら寿司」、「ニトリ」、「ドンキ・ホーテ」などの看板をあちらこちらで見かけます。こういった店の商品価格は日本よりもやや高めですが、日本で見慣れたものが容易に手に入るという安心感は計り知れないものがあります。

便利さでいえば、「ファミリーマート」や「セブンイレブン」といったコンビニエンスストアが多いのも特色。その密度は世界屈指といわれています。拙宅でいえば、歩いて3分以内の場所にコンビニが7軒あります。興味深いのは、台湾では店舗同士での搬送サービスを実施していること。つまり、自宅に近いコンビニから送り先に近い店舗へと、モノを送ることができるのです。これはコンビニ大国ならではのサービスといえそうです。

交通マナーは…… ハンドルをもつと性格が変わる?

スクーターは台湾の人たちの暮らしに欠かせない存在。出勤時間には「スクーターの洪水」が出現!

便利で快適な台湾ではありますが、大きな問題となっているのは「交通マナー」。普段は優しくて穏やかな性格の人でも、ハンドルをもつと豹変することが少なくありません。筆者もバスやタクシーに乗っていて、その激走ぶりに肝を冷やしたことが何度かあります。 

統計によれば、2022年度の交通事故による死亡者数は3,085人。これは人口が約6倍にあたる日本の3,216人と比較してもかなりの多さです。近年は海外メディアから「歩行者地獄」と批判されたこともありました。そんな背景もあって政府は交通対策に本腰を入れ始めています。

特に注意しなければならないのは、日本と異なり右側通行であること。そして、歩行者信号が青でも車やスクーターが右折してくることがあります。本来は歩行者から3メートル離れて一旦停車しなければならないのですが、なかなか守られていないのが実情。ただ、今年になって罰則が厳格化されたことにより、徐々に改善されています。 

政府は2030年までに交通事故による死者数を30%減らすという目標を掲げており、少しずつではありますが、改善の兆しが見えているのはうれしいところです。

高騰し続ける不動産価格。富裕層は日本で物件探し

上から街を眺めるとカラフルなトタン屋根が目に入ってきます。これも台湾の街の個性の一つといえます

次に住居ですが、台北には一軒家はほとんどありません。多くはマンションやアパートで、建物同士が近接しているため、日当たりや風通しが悪く、いい物件を探すのは至難の技となっています。

古いアパートには窓に泥棒避けの鉄の面格子が付けられていたり、屋上にトタン屋根の小屋が増築されたりしています(現在は禁止)。外観はキレイとはいえなくても室内はリノベーションされており、スタイリッシュな物件もあります。なかにはあえてこうした古いアパートを借り、自分好みの内装に変えている人たちもいます。

不動産価格はまさにうなぎ登りで、新築マンションはもちろん、中古マンションでも日本円で億を超えるところは少なくありません。こういった状況なので、日本の方が質の良い物件が手に入ると言われ、富裕層の間では日本で物件探しをするのが流行しています。

一方、賃貸は場所や築年数によりますが、市内中心部ではエレベーターなしの古いアパートが30坪で2万5千元程度(約11万)。管理人がいるエレベーター付きのマンションは、20坪程度で倍近くの値段を覚悟する必要がありますす。

修理は日常茶飯事。建付けの悪さが悩みの種

住宅環境で悩みの種なのが、築年数に関わらず、建付けの悪いこと。水回りや電気系統のトラブルは割と多く、「突然、壁から水が漏れ出した」といった話を聞くこともあります。さらに修理には時間がかかったりするので、忍耐力が試されます。

また、日本よりも家主の権利が強いので、借りていた部屋を急きょ追い出されてしまうケースも聞きます。店を改装したばかりなのに急な家賃の値上げを要求され、泣く泣く出て行くことになったという友人もいます。いい大家さんに巡り会えるかが重要になってきます。もちろん、これは運次第なのですが……。

広がる収入格差。「小さいけれど確かな幸せ」を追い求める若者たち

薬草茶の老舗は3代目がカフェスタイルにリニューアル。萬華にある「老濟安」

台湾の人々の年収ですが、政府統計によれば、2022年の平均年収は約70万元(約308万円)で、過去最高記録を更新しました。金額だけで見ると日本より少なく感じるかもしれませんが、可処分所得は一世帯あたり平均約110.9万元(約488万円)で、日本との差はかなり狭まりつつあります。

とはいえ、景気のいい話ばかりではありません。世代や職種による収入格差は大きく、物価も年々上昇しています。人々の生活は必ずしも楽ではなく、不動産を購入することは夢のまた夢となっており、若者たちは自分の趣味や好きなことにお金を使い、日々を楽しく過ごすことを考えるようになっています。村上春樹のエッセイに「小確幸(小さいけれど確かな幸せ)」という言葉が登場しますが、これは台湾でも共感を生み、台湾華語(台湾式中国語)でもそのまま使われています。

起業家精神に富む人たち。失敗しても挑戦が讃えられる

取材やインタビューをしていると、「30代になったので独立して、ブランドを立ち上げました」という起業家精神に富む若者によく出会います。カフェやレストランを開いたり、雑貨や食品のブランドを立ち上げたりと、自分の才能やバックグランドを生かそうとする人たちが少なくありません。 

とはいっても、チャレンジが必ずしも成功するとは限らないのが現実。日本では事業に失敗すると、この世の終わりのような悲壮感が漂いますが、台湾は様相が異なります。たとえ失敗しても、その人をあざけ笑ったり、過度な同情をしたりはせず、その人が挑戦したことを前向きに評価する傾向があります。こうした空気感が社会全体を明るくしているのかもしれません。

自由で大らかな社会。女性の社会進出は進んでいる

台湾の総統(大統領)が女性であるように、女性の社会進出はかなり進んでいます。共働きも一般的で、三食がすべて外食だという夫婦も多く見られます。伝統的な価値観をもつ人もいますが、女性だから家事をしなければならないといった固定観念に縛られている人は少ない印象です。

日本と同様、急速な少子高齢化は進んでいますが、社会全体で子どもを育てていこうという意識は高く、子連れに優しい社会となっています。以前、日本から来た友人が「レストランで店員さんたちが子どもをあやしてくれたので、ゆっくりと食事が楽しめた」と感激していたことがありました。

大らかで包容力のある人たちが多いので、ときにはそれが緩さに繋がってしまうことはあるのですが、社会全体にどこかゆとりが感じられ、気遣いや優しさに触れられる機会が多いのも台湾の個性といえるでしょう。

分かち合いの精神。思いやりに溢れた台湾の人々。

クヴァラン族の祭典。台湾政府が認定しているだけでも原住民族は16部族います。多彩な文化に触れられます

台湾といえば、東日本大地震の際、巨額な義援金を送ってくれたことを覚えている方も多いと思います。これは困っている人を放っておけないという国民性によるものと思われます。筆者自身も多くの方に助けられてきました。

また、フレンドリーでサービス精神が旺盛な人も多いので、何か一つ聞くと何倍もの情報を教えてくれたりします。自分がいいと思ったモノやコトを分かち合おうという気持ちが強く、ときにはちょっぴり前のめりにアレコレと教えてくれることもあります(笑)。こういう状況から、言葉ができない外国人であっても、台湾について学び、深いところまで入り込むことができるのです。

複数の民族が暮らす台湾では、多様な文化に触れることができます。知れば知るほど面白く、長年住んでいても常に新しい発見があり、飽きることはありません。

暮らしてみるといいことも悪いこともあると思いますが、まずは旅行で何度でも訪ねてみてください。きっと新たな世界観が開け、いつのまにか台湾の魅力にハマってしまうはずです。皆様の台湾体験がより充実したものになることを願っています。

写真・文:片倉真理
編集:ヤスダツバサ(Number X)

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