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【現地人に聞くイタリア🇮🇹事情】幸せに生きるコツを学べる? イタリアの食、バカンス、暮らしのお金事情

イタリアからボンジョルノ!

イタリアと聞いて、思い浮かべるのはなんでしょう。パスタにアート、車、サッカー…… 日本でもよく知られた“イタリア”はたくさんありますよね。人気の観光地でもあり、訪れたことがある方も多いかもしれません。

「マンジャーレ・カンターレ・アモーレ(食べて、歌って、そして愛して)」の国イタリアは、なんだか陽気で楽しそうだけど、実際のところは、さてどうでしょうか。

気づけば在住20年余の筆者が、日々体験しているイタリアを食文化や働き方をベースにご紹介したいと思います。そして、暮らしのお金事情も。イタリアという国を知っていただくきっかけになれば、幸いです!

文・写真:岩田デノーラ砂和子(さわぼん)
現地コーディネーター/編集ライター/通訳。慶應義塾大学卒業後、(株)リクルートを経て、フリーランスに転身。2001年にイタリア・ローマに移住し、2010年からは、シチリア州都パレルモを拠点に活動中。女性誌やガイドブック、WEBで、現地情報を発信するほか、TVなど日本のメディア向けコーディネートをしています。イタリア関連書籍多数。無類の犬好き。
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・Webサイト:https://bonsenpai.com/

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イタリアの豊かな食文化を支えるカンパニリズモ

イタリアを知る上で、キーワードになるのは「カンパニリズモ」。

12世紀ごろのイタリア各町にそびえ建つ鐘楼(カンパニーレ)が、その町を象徴するものだったことから、「我が村が一番」という強い郷土への愛着を示す言葉として生まれました。そして今もなお、同じニュアンスで使われています。

イタリアは、全土が統一されてから、約160年。それでも、各地にそれぞれ受け継がれてきた伝統や習慣、文化が、色褪せることなく残されているのは、これもひとえにカンパニリズモのおかげでしょう。

イタリアに、イタリア伝統料理はない?

食文化は特に顕著で、地元の人々が愛してやまない伝統的な郷土料理や食材が、全国津々浦々に無数に存在しています。

例えば、フィレンツェのレストランで「カルボナーラ」をオーダーしたくても、メニューにない。なんてことがあります。なぜならカルボナーラは、ローマ料理だから。ジェノベーゼソースは、リグリア州の料理。バーニャカウダは、ピエモンテ州の料理。などなど、日本でよく知られた有名メニューは、たいていどこか地方の○○料理だったりします。

そこでしか食べられない味を、「わざわざ本場に食べに行く」のは、イタリアの醍醐味のひとつ。

もちろん、旅行者向けのレストランなら、各地の料理がありますが、せっかくなら、本場で食べたいものです。

地元への誇り、若者の参入が増加するイタリアの農業

各地のニッチな食文化は、時代と共に消滅していきそうなものですが、地元に誇りを持った若者が後を継ぐから安泰です。

進学や就職で外に出て、Uターンする人も多く、昨今は、第一次産業に回帰する若者が増えているそうで、多くのメディアで紹介されています。

生産者協会Cordilettiの分析を紹介したこちらの記事によれば、2023年までの10年間で30歳以下の農業従事者が、12.8%増加。ここ数年のトレンドで、2015年からの5年間では、35歳以下の増加率が12%で、欧州の中でトップでした。

若い農業従事者が牽引する企業は、デジタル・テクノロジー化が進み、景観にまで配慮した持続可能性の高い、多機能で革新的な農業を展開。農地は全体の平均より54%広く、売上高は75%も上回っているそうです。

古代品種や絶滅品種を復活! ブランド化で市場拡大へ

実際、代々続く農家の3代目や4代目が、大学卒業後に実家に戻り、知識や人脈を生かして、生産規模の拡大やマーケットを広げて成功するケースは、これまでワイン業界ではよくありましたが、オリーブオイルから柑橘類まで、あらゆる農産物で見られるようになってきています。

シチリアの博物館で発見された古代ローマ時代の小麦の種から古代小麦の復活に成功し、国内外でブームを起こした方や、絶滅危惧品種の野菜を手がけ、地元に貢献している方に、取材でお会いしたことがありますが、家族の歴史を熱く語りつつ、未来を見据えるその姿は頼もしく、業界の期待とは別に、「大地にしっかりと根を張って生きるとは、このことか!」と感銘を受けました。

イタリアの「D.O.P.(保護原産地呼称)制度」や「スローフード協会」など、地域とその食材に付加価値を与え、ブランド化する仕組みとカンパニリズモが支えるDX農業。今後も、イタリアの豊かな食文化はしっかり続いていきそうです。

イタリア人の主食パスタに変化、グルテンフリー

イタリアの食文化といえば、パスタ。主食ではありますが、昨今は、既存のイメージと、少々様相が異なってきています。

炭水化物ダイエットを意識して、回数を減らしたり、夜は食べないようにしたりする人も多く、また、イタリアには意外に多いグルテンアレルギーの問題がクローズアップされたことで、グルテン不耐性を自認する人が急増。

グルテンフリーの専門店や、スーパー内にも特設コーナーがあり、米粉やトウモロコシ粉のパスタやパンのほか、ビールまでグルテンフリーで揃えることができるようになりました。グルテンフリーでオーダーできる店も増えています。

パスタの国なのに、意外や意外、グルテンフリー天国だったりもするわけです。

コオロギ粉のパスタやパンは禁止

昨年は、コオロギ粉騒動がイタリアでも起きました。1月に解禁になり、使用食品が店頭に並び始めた4月には、早くも「昆虫食規制法案」が可決。

それは、「パスタとピッツァへの使用禁止」「表示義務と専用棚の設置」など、イタリアを代表する伝統料理のイメージの保護と、将来的な伝統食文化の保護。透明性を担保し、消費者が知る権利を保証ことなどを目的としたもの。

▼詳細はこちらをどうぞ

これが出たときには、「守られたー(うっかりコオロギ粉を食べたくないですからw)」とホッとしたのと同時に、イタリアが目指す食文化を見た気がしました。メイド・イン・イータリーを守り、革新と伝統のバランスをとりながら発展していく……。

コロナ禍でもそうでしたが、日頃何かと問題の多いイタリア政府も、食と健康問題に関しては、判断が早いし熱心(笑)。食と健康は、生きる基本であり、そこがしっかりしていれば、あとはどうにでもなるものなのだ。と、イタリアにいると感じることです。

終わりよければ、すべてよしのイタリアンスタイル

ここからはイタリア人の働き方や休暇、価値観など、ライフスタイルにまつわる話をご紹介します。

悠久の流れのなかで、数分はただの誤差

まずは、時間感覚から。もちろん、イタリア人の中にも、日本並みに時間厳守の人もいますが、一般的には、少々ゆるめ。

例えば、30分程度の遅刻は、遅刻とはみなしません(笑)。特にプライベートであれば、映画や飛行機など、変更が難しい場合以外、大した問題でもないので、互いに許し合うのが基本スタイルです。

公共交通機関の遅れや、銀行や郵便局の想像を絶する長い待ち時間……日々起こる不測の事態に対応するために、先々の予定をあまりぎゅうぎゅうに詰め混まないのが、自分へのリスクヘッジ。遅延や待ち時間を織り込んだ“余裕のある”スケジュール管理が、求められるのです。日本とは、だいぶ違いますよね!

しかし、遅延や想定外の待ち時間が発生した時に、「信用できない!」と相手にストレスを感じるのか、「ま、仕方ないか」と自分の許容範囲を広くするか。どちらで捉えるかで、イタリアへの印象は、だいぶ変わってくることでしょう。

慌てて時間通りにくるより、無事でいて

あるホテルのオーナーに取材をしたときのこと。イタリア人カメラマンが、遅刻したので恐縮していると、「焦って事故に遭われるより、安全にきて、落ち着いた気持ちで良い仕事をしてもらった方が良い」と言われたことがありました。

30分ほど遅刻したカメラマンを迎えると、まずはコーヒーを一服w。

お忙しいオーナーのはずですから、このままでは1日の予定が押しぎみになってご迷惑なのでは? と心配しましたが、結果的に、取材は時間通りに朗らかに終了。

余計なことを排除して、爆速で巻き返す力。どんな働き方でも、結果が良ければ良い。イタリア人と仕事をすると感じることです。

(ただし、これは責任の伴う個人事業主や経営者など、自身の職業に対する意識が高く(遅刻はするけど)、結果が直接自分に返ってくる仕事に限ります)

やるときはやるけど、やらないときはやらない

余談ですが、以前、東京に移住したばかりのイタリア人の友人が、こんなことを言っていました。

都内のカフェでバイトをしていた彼女は、お客さんが誰もいないタイミングに、壁にもたれてスマホを見ていると、先輩に「テーブルを拭いて」と言われ、「さっき拭きました」と答えると、「振りで良いから、動いて」と言われたのだそうです。

「なぜ休んだらいけないの? 休んでおいた方が、次にお客さんがきたときに、良い接客ができるのに。しかも振りって。疲れるだけじゃない?」

前述のように、不測の事態が発生しがちなイタリアでは、余力を残しておかないと詰みますが、予定調和の日本では、余力を残す必要もない。ということに、カルチャーショックを受けたようですが、ベストパフォーマンスのためにも休んでおきたい。というのは、「だよね」とは思いました。

やるときはやるけど、やらないときはやらない。このメリハリ感覚を「サボっている」のではなく、「必要なお休み」とするのが、イタリア社会というところでしょうか。お休み、大事ですよねー。だって人間だもの。

バカンスは本当に長期間休むのか?

さて、いつも余力を残しておきたいイタリア人。最大の余力充電期間、バカンスは、人生において最も大切なものでもあります。

バカンスの語源は、ラテン語で「空っぽ」

空っぽになり、自由な時間を楽しむという意味になります。学校の夏休みは、8月上旬から9月中旬まで。たっぷり3ヶ月間ありますが、大人の休みは、どれくらいでしょう。

2023年の夏季休暇の平均日数は、約11日。1週間以内が約半数で、1〜2週間が25%、1カ月以上は4%でした。

思いのほか、少ない日数ですが、その前後の浮き足立った期間と放心する期間を含めると、だいたい1カ月くらいバカンス状態になっており、仕事が滞っても「夏だから」がまかり通る期間と考えると、イタリア人の長期休むイメージは、あたらずと言えども遠からず。

ちなみに、バカンスのコストは、一人当たり668ユーロ(約11万円)で、最もお金を使ったのは、食事です。

イタリアの暮らしのコスト

最後に、暮らしのコストをご紹介します。

ISTAT(国立統計研究所)が出したデータから平均値を算出したこちらの記事によれば、以下の通り。

  • 都市中心部の家賃 (3寝室): €1,051.57(約17万円)、同郊外: €751.79(約12万円)

  • 光熱費:€143.94 (約2万3千円)

  • 外食(ランチ):€25(約4千円)

  • 卵 12 個:€2.58(約420円)

給与は、€29,300(約468万8千円)。インフレによる物価・光熱費の影響で、生活コストは20年前の3倍ですが、賃金の伸び率は、+50%に留まっています。

※1ユーロあたり162円で算出

まとめ:地中海の輝く太陽と青い空の元、今を生きることを楽しむイタリア人

欧州の中でも高齢化がトップで、少子化も進むイタリア。失業率も7.9%と高く、移民問題や格差の増加など、社会全体が多数の問題を抱えてはいますが、受け継がれてきた伝統や文化が彩る街に、悲壮感はまったくありません。

地中海の輝く太陽と青い空のおかげ? かもしれませんが、体に良い地元の食材を美味しくいただき、自分の時間を存分に楽しんでいる。そんなイタリア人たちが、そこに暮らしているからに違いありません。

年齢性別にこだわらず、自分次第でチャンスは見つかり、またお節介にあれこれと世話を焼いてくれる人も多いので、やりたいことがある人にとっては、魅力的な国の一つでもあるかもしれません。

まずは旅行でもぜひ、魅力溢れるイタリアを体感してみてください。

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写真提供・文:岩田デノーラ砂和子(さわぼん)
編集:ヤスダツバサ(Number X)

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