【現地人に聞くカナダ・バンクーバー🇨🇦事情】美しい自然と多文化が共存する国。カナダの文化や物価、ビジネス事情
カナダのバンクーバーは、美しい自然環境と多文化が共存する都市として知られ、住みやすさランキングでも常に上位に位置しています。しかし、実際に生活してみると日本とのギャップに驚かされることも多々あります。
この記事では、2021年のパンデミックの最中にバンクーバーに移住した日本人経営者である筆者が感じたリアルな生活情報をお届けします。特に、バンクーバーの物価や年収、職業、文化について深掘りし、弱肉強食の北米で生き抜く知恵もご紹介。
バンクーバーの魅力と現実をお伝えし、移住を考えている方やビジネス展開を考えている方々にお役立ていただければと考えています。
個人的にも、バンクーバーを選んだ理由は、多様な文化の中で子どもを育てたい、自分も新しい価値観を手に入れたいと思ったからです。カナダは多くの高度技能移民を受け入れ、世界的にも教育レベルが高いことで知られています。
先進国の中でも人口が毎年増えていき、成長する都市の中では、毎日が新しい発見の連続であり、その経験を通じて皆さんにリアルな現地情報をお伝えできればと思います。
親日家が多いバンクーバー
バンクーバーの人々は非常にフレンドリーで、多文化、多民族が共存する街です。道に迷ってたら必ず誰かが助けてくれますし、公共交通機関では子どもと一緒に乗っていればほぼ確実に誰かが席を譲ってくれます。また、英語が通じにくくても一生懸命聞き取ってくれますので英語初心者にもオススメです。
カナダ人には、いじめや差別をなくそうという考えが根付いており、「ピンクシャツデー(いじめ反対の日)」といういじめ防止の運動が2007年にカナダ・ノバスコシア州で始まりました。
バンクーバーは日本との歴史的なつながりが深く、戦前に多くの日本人が移住してきました。その多くは漁民や農民であり、当時の史料は、日系センター(バーナビー市)や市内に残っています。
日本の春といえば「お花見」です。街のいたる所(4万本以上あるといわれている)に桜の木が植えられており、春になると桜がいたるところで満開になります。
また、昨今の円安による日本旅行ブームや和食ブーム、アニメブームから「日本に旅行に行ってきた」「日本人が握る寿司が好き」「アニメで日本語を勉強している」と日本文化に親しんでいる人も多くいる印象です。
特に、英語のアクセントから日本人であるとわかると、声を掛けられ、日本のことについて興味深く聞いてくる人が多いと感じます。
中華、ベトナム、イタリア、フランス…… 多様な国の料理が集まる中、和食が覇権を握る
カナダの食材といえば「サーモン」「メープルシロップ」と思い浮かべる人も多いでしょう。ただ、カナダ料理というと、フライドポテトにグレイビーソースと粒状のチーズカードをかけた「プーティーン」しかなく、食の歴史の浅さが浮き彫りになります。
しかし、バンクーバーは多文化が共存する都市であり、その食文化も多様。中華、ベトナム、ギリシャ、イタリア、フランス、中東など様々な国の料理が楽しめます。特に人気なのは和食で、街中のいたる所に和食レストランがあります。
ミシュラン獲得店の9軒中、3軒が和食
興味深いことに、2023年、ミシュランガイドで星を獲得したレストラン9軒の内、3軒が和食レストランであり、そのうち2軒はお寿司を含むコース料理、1軒は日本食とのフュージョン料理を提供しています。
また、コース料理の価格でも競争力を伺うことができ、フレンチやイタリアンのコース料理の価格が100〜200カナダドル(11,500〜23,000円@115円)なのに対して和食では300ドル(34,500円@115円)を超えるものもあります。
家庭料理でも和食は人気です。食材の調達にもあまり苦労をしません。カップラーメンだけでなく、日本の調味料や冷凍食品、家庭料理で使用する食材(こんにゃく、油揚げ、れんこんなどの野菜)もすべて地元のスーパーで手に入ります。バンクーバーには中華系のスーパーや日系スーパーがたくさんあり、日本で生活していたときと同じご飯が食べられます。
特に、地元のシーフードも豊富で、ボタンエビや新鮮なウニ、牡蠣、刺身なども買うことができます。このため、日本食が恋しくなることもありません。
アメリカよりはマシ? だけど、インフレに苦しむバンクーバー
カナダは世界で2番目に国土が広く、日本の26倍の面積があります。人口も国全体で4,100万人(2024年3月)なので、日本に比べると圧倒的に人口密度は低く、家も広々しているというイメージを持っている方が多いかも知れません。しかし、カナダで一番の社会問題の一つが住宅価格の高騰なのです。
住宅価格の高騰で街中が高級住宅街?
バンクーバーは、北には1,000メートル級の山々が迫ってきており、南はアメリカとの国境があるという地理的な制限から都市を広げて行くことに限界があります。住宅価格の上昇は著しく、過去10年間で約2倍に増加しています。
現在、一軒家の平均価格は約200万カナダドル(2億3千万円)、コンドミニアムの平均価格は約80万カナダドル(9,200万円)に達しています。もちろん、日本の住宅よりは広い物件が多いですが、それにしても一般人が手に入るようなものではありません。
賃貸も高額で、1ベッドルーム(日本でいう1LDK)で平均2,376カナダドル(27万円)の家賃が必要です。市のコンドミニアムの平均家賃は月額約2,500カナダドルです。家賃は毎年上昇しており、現状維持の家賃というのはほとんどありません。
一方でカナダの平均年収は、約6万カナダドル(690万円@115円)であり、月収に直すと5,000カナダドル(575,000円)ですが、家賃がかなり圧迫します。相場では、家賃の2.5倍の月収は必要と言われており、給与明細や確定申告書を提出させてるケースも多々あります。
このため、この街で生まれて持ち家がある人は、大人になっても一人暮らしはせず、実家から会社に通うという人がほとんどです。
輸出の約8割をアメリカに頼るカナダ。大国と仕事ができるメリット
さて、ビジネスの面でもバンクーバーの特徴に触れておきたいと思います。カナダはサービスや商品の輸出の約8割をアメリカに頼っています。アメリカ法人がカナダに支社を作り、外注をしたり、作った製品を輸出するということが頻繁に行われています。
日本のトヨタやホンダもカナダに工場を作って北米市場向けの自動車を製造しています。ホンダがトロント郊外にEVの工場を建設していることが日本でも大々的に報道されていたと思います。
「ハリウッド・ノース」として知られ、映画産業が盛ん
バンクーバーでは映画産業が非常に盛んで、「ハリウッド・ノース」として知られています。多くの映画やテレビドラマがここで撮影されており、CGや映像制作に関わるスタジオも多く存在します。例えば、俳優の真田広之さんがプロデュース・主演したハリウッドドラマ「SHOGUN」もバンクーバーで撮影されました。
自然が豊かなシーンの撮影が撮影できるだけでなく、市中のシーンにおいてもアメリカの町並みとほとんど変わらないことから、様々なところで撮影がされています。私も何度か撮影現場に出くわしたことがあり、身近に感じます。
Slackの創業者もバンクーバー出身。スタートアップ企業の動きも活発
また、スタートアップやテック系の企業も活発で、Slackの創業者であるスチュワート・バターフィールドもバンクーバー出身でアメリカに進出しました。文化的なバリアがほとんどなく、優秀な人材を確保できることが理由の一つです。
世界ランキングトップクラスの国立大学が存在することや高度技能移民を受け入れていることでその土壌も育ちやすいです。一方で、一般的に年収の高いアメリカ人(平均年収:約6万米ドル=960万円@160円)と比べても人件費のコストパフォーマンスが高いことが分かります。
私は、カナダでも現地法人を設立して、カナダ人を雇用しています。私の会社のクライアントのほとんどはアメリカ企業ですが、上述のような恩恵を受けているのは間違いありません。
また、バンクーバーのあるブリティッシュコロンビア州では、外国人が法人のオーナーになることができ、中小企業かつ特定の条件に該当する法人は、法人税は約11%と優位性があります。
北米で働きたい、北米でビジネスをしたいという人にはファーストステップとしてもメリットがある街であると考えています。
バンクーバーでの生き方
最後に、バンクーバーで生活する上でどのように楽しんでいるのか、そして、どのように生き延びているのかをご紹介します。
自然を満喫するべし!
バンクーバーは自然に囲まれた都市で、四季を通じてさまざまなアウトドア活動が楽しめます。街の中に熊が出ることがあるくらい自然豊かです。夏には多くのフェスティバルやイベントが開催され、市内の公園やビーチでは、ピクニックやバーベキュー、カヤックなどのアクティビティが人気です。
最近では公園での飲酒が許可されるようになり、家族や友人と一緒にアウトドアで過ごす機会が増えています。特に「スタンレーパーク」は、バンクーバー市民にとって重要な憩いの場となっており、毎年多くの観光客が訪れます。
秋から春にかけては「レインクーバー」と揶揄されるほど、雨が降ります。しかし、ウィンタースポーツの国なのでスキーやスケート(ホッケー)が盛んです。
都市部から車で30分程度の距離にスキー場が3つもあり、少し足を伸ばすと、ウィスラーという世界的に有名なスキーリゾートもあります。シーズンパスを毎年購入して毎週金曜日(日本は土曜日)は、何本も滑っています。
現地人との交流を楽しむ
海外に住む日本人の45%が「孤独を感じる」と外務省の調査で明らかになり、びっくりした人も多いのではないでしょうか。バンクーバー都市圏では日本人の人口は3万人程度といわれています。日本人同士のコミュニティだけでは不安になる人も多いと思います。私はやはり現地の人とつながることをオススメしています。
北米は「コネ社会」だからというのが大きな理由です。コネ、つまりリファレンス(紹介)やレピュテーション(評判)が何にしても重要です。
例えば、クレジットスコアというものがあり、信用力がないとクレジットカードや住宅の賃貸・ローンを手に入れることはできません。また、場合に寄っては前の大家さんのリファレンスレター(紹介状)が必要な場合もあります。
就職においても前職の会社からのリファレンスレターはほぼ必須であり、応募する会社に友人がいる場合は書類選考をスキップして面接の機会をもらえることもあります。新しいビジネスをするにも紹介は重要です。
紹介がないと相手にしてもらえないことも多々あります。公私ともに有効な人間関係と信用力を築くのは北米で生きて行くには重要なことです。
カナダの人との人脈構築はどうすれば良いのか。それは日本でやっていることとあまり変わりがありません。子どもの学校が同じ保護者同士で仲良くなる、ビジネスのイベントに参加して知り合う、趣味のコミュニティで仲良くなるという具合です。
飲み会に誘うというのは希ですので、コーヒー→ランチ→ハッピーアワーという順番で誘って距離を縮めるのがよいと思います。
コミュニケーションTIPS
日本人にとってはやりやすいところがあります。欧米人は物事をはっきり言うというイメージがあるかもしれません。実は、意外と日本人と似ていて、直接的な表現を嫌う傾向があります。お願い毎をするときも「Can you 〜」と聞くのではなく、「May I ask 〜」や「Would it be possible to 〜」というような遠回しの表現が良いです。
これだけでなく、日本人みたいにカナダ人はすぐに「Sorry」と言います。※アメリカ人は言いません(笑)。
【まとめ】多様な文化や美しい自然に触れることで自分の価値観もアップグレード
バンクーバーはインフレや住宅価格の高騰で住みにくい面があるのは事実です。ただし、人口増加と共に経済発展が進む北米の一都市で生活・働くことで人生のスキルアップ・キャリアアップにつながることは間違いないと思います。多様な文化や美しい自然に触れることで自分の価値観もアップグレードしている実感があります。
日本から移住し、ビジネスの北米展開を進める中で、まだまだ学ぶことが多いと感じています。北米市場での展開に挑戦しながら、成功を目指して頑張っていきたいと思います。
今後も現地のリアルな情報をお届けし、日本の皆さんに役立つ情報を提供していきます。海外でのチャレンジを考えている方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
写真・文:神村優介(シェイプウィン)
編集:ヤスダツバサ(Number X)
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