【現地人に聞くオーストラリア🇦🇺事情】人間味や豊かな自然あふれる“稼げる国”。オーストラリアの文化や年収、物価事情
最大の都市シドニーまで、日本から飛行機で約8〜9時間。観光や留学、移住先として、日本人にも人気のオーストラリアは、世界各地からさまざまな人種が集う「マルチカルチャー(多国籍文化)」の国として知られています。
オーストラリアといえば、コアラやカンガルー、ウォンバットなど固有種の動物、グレートバリアリーフやエアーズロックといった雄大な自然、オージービーフや小麦といった農畜産物といった自然と動物のイメージではないでしょうか?
しかし、1992年からシドニー五輪が開催された2000年を経て、2019年まで、先進国(G20)の中で最も長く経済成長を続けた、経済大国という側面もあります。
私はワーキングホリデーをきっかけに、日本では見られない大自然に魅了され、2010年に永住権を取得し、気づけば20年近くオーストラリアに住んでいますが、その中で、オーストラリアのヒト、モノ、カネは大きく変化しました。そこで今回は、そんな変化の著しい近年のオーストラリアについて紹介したいと思います。
親日家が多く、フレンドリーなオージーは今やアジアに近い?
オーストラリアは英語圏の国とあって、米国・英国などと同じように見られますが、英語圏の国の中で最も日本語学習者が約42万人(出典元:日本語学習者の多い国・地域(外務省))と多く、日本大好き! という人が多い親日国家です。
地理的にもアジアに近いせいか、スポーツを見てもサッカーではアジア杯に出場したり、観光もインドネシアや日本などのアジア圏に行くオーストラリア人(オージー)が非常に多くいたりします。また、オーストラリアに留学する国籍のトップ3も中国やインド、ネパールといったアジア出身者が占め、街中を歩いていてもアジアの人たちの姿をよく目にします。
事実、オーストラリアは全人口の約5割が移民で、両親ともにオーストラリア人出身者という人の割合よりも多くなっています。私にも息子が1人いますが、学校の友達はオーストラリア人よりもそれ以外の国籍の人が多くいます。そういう意味では、オーストラリアという国はアジアに近くなっていると実感しますね。
世界各地の本格料理が楽しめるオーストラリアのレストラン
多国籍国家であるオーストラリアの料理の幅の広さは、フードコートに行くと実感できます。
「マクドナルド」や「KFC」といったグローバル・チェーンを始めとして、インドカレーの専門店や飲茶、韓国料理、グリーク(ギリシャ)サラダの専門店、トルコ料理を代表するケバブ、テイクアウトのピザ屋さん…… 今日はどの国の料理を楽しもうかと悩むほど。どの店も移民の皆さんが作っているので、本場の味を気軽に楽しめます。
また、私たち日本人はオーストラリアのスーパーと併せて、日本食料品店を利用する機会も多く、スーパーの近くに日本食料品店やアジアン食料品店などが併設されているショッピングモールが多いので便利です。もちろん、ハラール(イスラム法において合法なモノ)向けの中東食料品店もよく目にしますので、自炊でも世界の料理に挑戦できて楽しいです。
物価高でもシーフードやビーフは手頃な食文化
農業大国として知られるオーストラリアも世界の物価状況と同じく、近年は物価高が続いています。外食一人当たりだと、ランチなら約20豪ドル、ディナーなら約40〜50豪ドルは必要です。
※1豪ドル=約107円
とはいえ、自炊をすれば、食費はある程度抑えられます。ここでは、オーストラリアの特徴的な食文化を紹介していきますね。
公園には共有のBBQ台が? BBQのメインはソーセージ&ハンバーガーブームというお肉事情
オーストラリアの国民食といえば「BBQ」。各家庭に1台はBBQグリルがあり、週末にはホームパーティで、お庭でBBQを楽しむ光景がよく見られます。また、公園にはみんなが共有で使える電気式のBBQ台が設置されているのもオーストラリアならでは。
オーストラリアの「食」と聞くと、「オージー・ビーフ」を思い浮かべる人が多いと思いますが、BBQでビーフステーキはあまり見かけません。一番人気の食材はソーセージで、1パック10本入りで6.5豪ドル程度とお得です。
近年、オーストラリアではハンバーガーがブームに。さまざまなショップが誕生し、肉肉しい極厚パティのモノやソースにこだわったモノ、本場アメリカの有名店のモノなど、種類が豊富な上に、お店によって異なる特徴を出していて、ハンバーガー屋さん巡りも楽しくなりました。
中でも、多くの店で人気メニューとなっているのが「Wagyu Burger」。かつてより、日本との貿易が盛んなオーストラリアでは、日本の和牛を種牛として育てるファームもあることから、Wagyu(和牛)の質が高いことでも知られています。肉に“サシ”を人工的に注入する偽Wagyuを販売する国が増える中で、オーストラリアは検疫が世界トップレベルに厳しく(それだけに日本からの食品持ち込みは大変)、食品安全基準も高いため、安心できます。
ちなみに、オージー・ビーフはオーストラリアの主要輸出産物のため、良質なオージー・ビーフは日本などの海外に輸出されてしまうせいか、オーストラリア国内のスーパーで買うビーフは日本で買うオージー・ビーフより美味しくないと個人的に感じています(笑)。
築地にも劣らない? 新鮮なシーフードが充実
日本人の食生活に欠かせないお魚ですが、オーストラリアも島国とあって、シーフードは充実しています。
“豪州の築地”と呼ばれ、観光地としても人気の「シドニー・フィッシュマーケット」は南半球最大の卸売魚市場で、取扱う魚の種類も世界第3位を誇る巨大水産市場。
中でもオススメは生牡蠣で、「シドニー・ロック・オイスター」という小ぶりの牡蠣は、とても濃厚な味で日本では食べられない味です。1ダース30豪ドルくらいで買えるのでトライしてみては?
意外と知られていないコーヒー、ワインは世界一の美味しさ
カフェ文化が充実しており、メルボルンは世界一カフェ数が多い街としてギネス認定されたほか、コーヒーメーカーが頻繁に国際金賞を受賞するといったことから「世界一コーヒーが美味しい国」ともいわれています。
カプチーノは5豪ドル程度と、日本とさほど変わらない価格ですが、個人経営の小さなお店でも非常に美味しいコーヒーを出してくれます。なお、エスプレッソをミルクで割る「フラットホワイト」はオーストラリア発祥のメニューで、日本ではほぼ見かけないので、ぜひオーストラリアに来た際は楽しんでほしいものです。
また、世界のソムリエも注目する世界最大級のワインコンテスト「Decanter World Wine Awards」でもオーストラリアのワインメーカーは常連で、2023年も世界1位に輝きました。その割に値段も安く、10豪ドルで十分良質なワインが楽しめます。酒屋で売られているワインもほぼ国産かニュージーランド産のものなので、そこも日本とは大きく異なるところですね。
給与は高いが物価・税金も高い! オーストラリアのお金事情
過去10年で経済が最も力強く安定してきた国といわれるオーストラリア。かつては農業の国のイメージでしたが、今や、ウラン産出国として注目を集め、鉱業、金融・保険サービス、ヘルスケアがGDPのトップ3の経済国へと変貌しました。
実は一人当たりのGDPでは、イギリスやドイツ、フランスといった列強よりも上ということはあまり知られていません。そんなオーストラリアで長年暮らしてきた私は良くも悪くも、急速に成長したオーストラリア経済に翻弄されました。ここではオーストラリアのリアルなお金事情を見てみましょう。
ワーホリで月50万円!? 観光・留学よりも“稼ぎ口”として注目される急騰する給与事情
ハワイやLAと飛行時間が近いことから、海外旅行や留学先として人気を集めてきたオーストラリアですが、ここ数年で物価とともにお給料も急騰し、「働き口」として注目されています。時給中央値は39.50豪ドル(約4,200円)となり、非正規労働者においては最低賃金が最も高い国のひとつとなりました。
こうした給与の高騰から、日本からの“出稼ぎワーキングホリデー”が急増しています。ワーキングホリデーの人気の仕事といえば、フルーツピッキングや飲食店ですが、普通に働いていれば、月50万円くらいは稼げてしまいます。
また、農業や鉱業に従事すれば、非正規雇用でも年収1,000万円を超えることは可能なので、ワーホリメーカーの間では、オーストラリアでがっぽり稼いで日本に帰るというのがブームになっています。
僕の知り合いでは、カフェで週5日勤務で月の給与が6,200ドルという人もいました。今の円安を考えれば、若者が日本でバイトするのが馬鹿馬鹿しいというのも頷けますね。
家賃は日本の約4倍! 広くて快適、でも住みにくい……
そんな“稼げる国”のオーストラリアですが、物価の高騰は著しく、特に家賃高騰による“レント・リスク”は社会問題に……。
これは、オーストラリアではベビーブームが続いているほか、留学や移民の受け入れ緩和によって近年、急激に人口が増えてしまい、住宅難が続いているため。同時に、経済が良くなり、外国人による不動産投機が急増したことで、人の住まない新築物件が増えたこともレント・リスクの一因といわれています。
シドニー、メルボルン、ブリスベンの3大都市での家賃の中央値は2024年6月現在、590〜700豪ドル(約6万3,000円〜7万5,000円)となっています。
「あれ、日本と同じくらい?」と思った方へ、オーストラリアでは週払いが一般的ですので、これは「週の家賃」です。ちなみに、僕が住んでいたゴールドコーストのフラット(マンション)もここ5年間で月8万円ほど家賃が上がりました。
オーストラリアでは毎年家賃が上がるのが一般的ですので、入居した時点が一番安いとあって、田舎に引っ越す人も増え、全国的に家賃は高騰しています。
また、一軒家の買い替えも一般的なオーストラリアは不動産ブームとなり、地価が上がり、住宅の売却が盛んとなりました。賃貸の場合、オーナーが物件を売ると賃借人は4週間以内に引っ越さないといけない法律となっていますが、近年は空室率が1%を切るという地域も珍しくありません。
極端な賃貸住宅不足により、違法な車上生活者が増え、公益テレビCMで警告が流されるほどの社会問題となっています。
税金は高いが公共福祉は充実。子どもの食事や歯医者も無料?
このように昔に比べると住みにくいイメージになったオーストラリアですが子育て世代には、いろいろと優しい福祉サービスがあります。
税金でいうと、一般的な所得税率は32.5%(課税所得:37,001〜87,000豪ドル)で、日本の10〜20%に比べるとかなり高いイメージ。
ただ、公共福祉は充実していると感じるので、不満は少ないようです。
例えば、公園の駐車場などは概ね無料だったり、16歳未満は週末・祝日の公共交通機関(バス・電車)は無料(クイーンズランド州)だったりします。レストランでは、Kids Free Meal(子どもの食事無料)メニューがあったり、歯医者は年間1,000豪ドルまで無料だったりと、官民併せてさまざまなサービスがあります。
個人的に好きだったのはスーパーマーケットの子ども用に無料の果物が置かれていたりするところです。
【まとめ】オーストラリアの豊かさは自然と人々によって作られる
いかがでしたか? オーストラリアのさまざまなリアルをお伝えしました。オーストラリアは現在、経済の豊かさで注目を集めていますが、物価や賃貸リスクなど厳しい側面もあるのが事実です。しかし、それでもなお、オーストラリアに住み続けたいと思うのは、やはり人間味の豊かさです。
2011年1月、33人の死者を出した「ブリスベン大洪水」ではこんなことがありました。
災害の翌日、州首相は被災者に対して詳細な大減税案と56億豪ドルもの緊急支援金を決定したという記事が新聞の一面に掲載。災害時の支援対策の決定がめちゃくちゃ早いことに驚きながら、仕事に向かうバスに乗るとき、「運賃は不要です。その代わり被災者に募金を」という張り紙の貼られた箱が運賃投入口の上に置かれていました。政府・市民が一体となって被災を乗り越えようとする、そのマインドと行動力には感銘を受けました。
大自然に囲まれストレスの少ないオーストラリアは、そこに暮らす人々の心の豊かさが今の経済の豊かさと安定につながっているのだと私は感じています。
写真・文:森茂樹
編集:ヤスダツバサ(Number X)