【現地人に聞く、ブラジル🇧🇷事情】“Porta aberta(来るもの拒まず)”の精神で自然と人を愛す。ブラジルの文化や物価事情
BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ5カ国の総称)やグローバルサウス(南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称)の核として、今後の成長が注目される国の一つ、ブラジル。人口は2億308万人を超え、2050年にはGDP世界5位になると予想されています(現在8位)。
しかし、日本からは最も遠く(平均飛行時間は24〜26時間)、今でも「サッカー」「サンバ」「スラム街」といった一昔前のイメージのままかもしれません。
建国から202年、広大な土地に多様な人種が混ざり合うブラジルは、知れば知るほど面白い国です。そのスケールの大きさを文章にするのは容易ではありませんが、ブラジルにて短期滞在→留学→国際結婚→起業をした私の実体験を交えながら、リアルなブラジル事情をお届けします!
日本とブラジルとの大きな違い
ブラジルには「ジェイチーニョ」という言葉が存在します。
歴史の流れに沿って庶民が培った困難を乗り越えるための手段で、良く使われることもあれば、悪く使われることもあります。「正面がだめなら、右から攻める」「敵と仲良くなってみる」など、ブラジル人の知恵と柔軟性、臨機応変な行動には驚かされることがあります。
また、日本人と比べて、ブラジル人は自分に対する評価が高いと感じます。人に褒められたら、素直に「ありがとう」と返します。自撮りも好きですし、自分の仕事や作品に対して「上出来!」と答える人が多いです。
優しさと危険が隣り合わせ!?
いつでもお年寄りやお子様連れを優先する優しさがあり、スーパーや病院、役所には必ず優先レーンがあります。バスや電車では優先席以外でも席を必要とする人に譲るのが当たり前です。
その反面、夜の一人歩きはオススメしません。昼間でも常に周りに注意しながら行動するのは少し疲れますが、気を付けていれば被害に遭うことはありません。
【物価編】インフレが激しい、賃金や家賃、税金たち
ブラジルの物価は決して安くありません。インフレが激しい国であり、80年代後半から90年代前半のハイパーインフレでは「レストランで食事し、支払いをするときには値上がりしていた」なんてこともありました。パンデミック以降は生活必需品が大幅に値上がりし、10年前位に比べて3倍近い値段になったモノもあります。
*円表記は2024年7月の平均レート(私が生活しているサンパウロの物価)
#賃金 ゆとりある暮らしに必要なのは約20万円
10年前の最低賃金は月724レアルなので、インフレに伴って賃金は上がっていますが、現在の物価でゆとりある暮らしをするために必要な世帯収入は月6,995レアル(約199,570円)といわれています。労働者の40%が非正規雇用で、女性の収入は男性よりも19.4%少ないです。
最低賃金:月1,412レアル(約40,280円)
正規雇用者の平均:月3,123レアル(約89,100円)
#家賃 サンパウロでは60mで約7.4万円
一般的に、私が住んでいるサンパウロのマンション(60㎡)の場合、平均月額2,600レアル(約74,180円)の家賃に加えて、管理費がかかります。戸数が少ない建物や、プールやジム、パーティーサロンがついているマンションの場合、管理費だけでも1,000〜2,000レアルする場合があります。
また、長期滞在者にオススメのワンルームマンションは管理費込みで月3,500〜5,000レアル程度です。
#税金 #保険料 高額な関税と健康保険
ブラジルの税制度は非常に複雑なため、現在大幅な税制改革が行われています。付加価値税は26.5%と決して安くありません。関税が高いことでも有名で、個人輸入の場合60%の課税があります。
また、民間健康保険は高額のため、ブラジルの保険加入率は25.07%。健康保険に加入していない場合、統一医療システム(SUS)で診察や治療、予防接種を無料で受けることができます。ただし緊急時以外は長い待ち時間があり、検査や手術は数カ月以上待つ必要があります。
#食料品 生鮮食品はリーズナブルな傾向
以下は食料品の価格例。野菜や果物は日本と比べると安価で、青空市では新鮮なものが必要な量だけ購入できます。
ブラジル米 5kg:27~40レアル(約770~1,140円)
日本米(ウルグアイ産):60~80レアル(約1,710~2.280円)
コーヒー
粉250g:10レアル(約290円)
(セレクト)粉250g:20レアル(約570円)
ロングライフ牛乳1L:6レアル(約170円)
#外食 日本よりも割高?
日本よりも高いと感じます。チップ制度はありませんが、レストランではサービス料として10%の支払いが加算される場合があります。
#支払い 水1本でもカード決済
カード社会なブラジル。ペットボトルの水1本でもカード決済します。前述した通り、賃金と物価が釣り合わないため、クレジットカードの分割払いで商品を購入し、高い手数料を払わされる人も少なくありません。
ネットバンクに抵抗がなく、中銀主導の即時決済システム「ピックス」を利用すれば手数料なしで24時間送金が可能です。
【文化編】ブラジル人を幸せにするもの6選
多くのブラジル人の生活は決して余裕があるものではありません。
格差や長年に渡る政治家や権力者の汚職、治安の悪さなど、ブラジル人も国にネガティブな発言をすることがあります。それでもブラジル人はブラジルが好きなのです。
最後に「ブラジル人」について触れていきます。
#01 家族や友人と集まったり、コミュニティを見つけたり。
多くの人は家族や友人と集まることが大好き。文化サークルや教会など、誰でも入れるオープンなコミュニティも多く、老若男女、人と関わる機会が多いと感じます。
多種多様な人々が生活しているため、きっと自分と気が合う友人やコミュニティがみつかるでしょう。
長期休暇は観光地巡りも人気ですが、都市部で生活している人は海岸沿いや避暑地でゆっくり過ごします。アマゾンなどブラジルの自然を感じる旅もオススメです。
#02 ジョギングしたり、美術館や博物館を巡ったり。
公園でジョギング、美術館や博物館巡りも人気のアクティビティ。毎週どこかで面白いイベントが開催されているため、どこへ行こうか迷います。サンパウロの人は働き者で、平日は仕事をしながら夜間の大学に通う人も少なくありません。週末は思いっきり楽しみます。
#03 イタリア料理やアラブ料理を食す。美味しい食事は元気の源
世界的にも高い評価を受けている、ブラジル料理。主食は米と豆、マンジョッカ(キャッサバ)という芋もよく食べます。マンジョッカは先住民が食べていた歴史があり、今ではブラジルの食卓に欠かせないものとなりました。
サンパウロは移民の影響でイタリア料理やアラブ料理を日常的に食べることができます。日本料理も定着しており、寿司や焼きそばだけでなく、近年はラーメンやカレー、お酒も人気です。
#04 「ボサノヴァ」はもう古い? 音楽と踊り大好き♫
日本でも人気のブラジル音楽「ボサノヴァ」は、ブラジルで軍事政権が始まる1964年前には下火になり、今では“懐かしいもの”とされています。
近年は地方発祥の音楽が全国的に人気になり、中西部の伝統セルタネージョ(ウニヴェルシターリオ)や北東部の若者の集まりだったピゼイロ、リオデジャネイロのスラム街で誕生したファンキなどがランキング上位を独占しています。殆どの音楽に踊りがあるのも特徴です。
#05 お試し期間「フィカール」を経て、「恋人」になったら長い付き合いに。
積極的にアプローチをする人が多く、相手にその気があればすぐに親密な関係に発展。それが「フィカール」という真剣交際をする前のお試し期間。複数人と同時にフィカールをする人もいますし、この関係を長く続ける人もいます。
真剣交際に発展すると、ツーショット写真や愛のメッセージをSNSに載せてアピールします。これはブラジル人の強い嫉妬心が関係しているでしょう。ただし、私の夫のように全く束縛しない人も存在します(笑)。
また、婚約する予定がなくても早い段階でお互いの家族に紹介します。ブラジルで婚姻届を提出するには書類や手数料が必要であり、離婚が認められない時代もあったため、事実婚も一般的です。
自由な恋愛観がある一方、婚前交渉を禁止している宗教もあります。近年、出会いの場所はインスタグラムやマッチングアプリが多いとのこと。
#06 コーチェラ出演アーティストも。世界最大のプライドパレード開催地
ブラジルのLGBTQ+のアイコンであるパヴロ・ヴィタールはコーチェラなど主要な国際フェスティバルの出演も果たしました。サンパウロの繁華街は同性愛者も多く、手をつなぎ歩くカップルも珍しくありません。
世界最大のプライドパレードが開催される国ですが、今年だけでも3万3000件のホモフォビア(同性愛者への差別行為)が報告されています。もし巻き込まれたら警察に相談しましょう。ブラジルではホモフォビアは犯罪行為に値します。
【まとめ】ブラジルは「Porta aberta(来るもの拒まず)」
少しでもブラジルに興味を持っていただけましたでしょうか。
ブラジル人を幸せにしているのは「人」と「自然」だと感じます。家族や友人と苦楽を共にしながら人間の温かみを感じ、もし何かに行き詰ったら、豊かな自然に触れ合うと「人間なんてちっぽけだ」と小さな悩みも忘れてしまいます。
2023年9月30日以降、日本とブラジル間の観光ビザは免除となりました。言葉の壁があっても、ポルトガル語の挨拶を覚えて、あとは意思疎通したい気持ちがあれば、ブラジルは「Porta aberta(来るもの拒まず)」の国です。是非一度、足を運んでみてください。
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写真・文:島田愛加
編集:ヤスダツバサ(Number X)
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