【現地人に聞く韓国🇰🇷事情】コスメや韓国料理、K-POPが人気な日本の隣国。“意外な実態”が満載、韓国の文化や物価、ライフスタイル事情
日本のおとなりの国、韓国。ここ数年は韓流ブームで、旅行や留学先としても大人気。韓国コスメや韓国料理、K-POPアイドルなどを求め、何度も足を運んでいる人も少なくないようです。
そんな私も、K-POPアイドル「BTS」をきっかけに韓国に興味を持った一人。2022年にソウルの漢陽大学語学堂に留学し、現在はワーキングホリデービザに切り替え、ソウルの東大門に暮らしています。
以前に一度韓国を観光に訪れた際には、日本語が通じることも多く、大きな不安なく留学に踏み切ったものの、やはり違う国。実際に暮らしてみて驚いたこと、はじめて知ったことは数知れず…。今回は、そんな私の韓国暮らしを通して、この国文化やリアルな暮らし、また、世界的に高騰している物価や、一人暮らしの経済事情についても、お伝えしたいと思います。
BTSをきっかけに、韓国好きになった私。コロナ禍に留学した理由
新型コロナウイルス感染症のパニックは落ち着き始めたものの、いまだ世界中でステイホームが常態化していた2022年。この不安はいったいいつまで続くのかわからぬまま、退屈さもピークになっていた私は、なんとかしてこの状況を抜け出せないだろうかと考えていました。そこで思いついたのが、韓国旅行。もともとK-POP好きではありましたが、この時期「BTS」にハマり、韓国に興味津々。5、6年前に一度旅行したことはあったのですが、その際は観光地をサラッと巡っただけでした。
要は急げと旅行会社へ問い合わせてみたところ、コロナ禍の影響によりこの時期の観光旅行はまだ難しいとのこと。半年間の留学ビザであれば渡航できるとわかり、軽い気持ちで韓国留学を決めました。私は、もともとフリーランスでWebデザイナー・コーダーの仕事をしていたため、環境が変わっても生活に影響がないのはラッキーでした。
韓国では今、日本ブーム!
韓国留学に大きな不安はありませんでした。以前の韓国旅行をした際に、ほとんどの飲食店で日本語が通じた記憶があり、「なんとかなるだろう」と気楽に構えていたのです。ところが、韓国に到着した当日から、それは、まったくの見当違いだったと大反省することに。まず、入国してからのPCR検査や隔離先のホテルの手続きなどが、言葉がわからずどうしていいかわからない。そんな私を助けてくれたのは、タクシー運転手のおじさんでした。街中でも困っていると「日本人ですか?」と声をかけてもらえ、何度も救われました。日本では「反日」に関する報道も多く、韓国人は日本人嫌いというイメージを持っている人も多いかもしれません。
しかし、私が韓国に来てからはそのようなことを感じる機会は一度もなく、むしろ、みんな日本が好きなように感じます。実際、若い世代を中心に、アニメやポップカルチャー、日本食など、日本ブームも起きています。「イエスジャパン現象」とも言われているようですね。
韓国人はみんなせっかち? 住んで実感した「パリパリ文化」とは
優しく温かい人が多い韓国ですが、一方では「パリパリ(早く早く)文化」とも呼ばれ、かなりのせっかちが多い印象です。韓国では、早ければ早いほどいいという考え方が重視され、何事もスピーディーであることが求められます。街を歩いていると、人にぶつかられてしまうこともしばしばあります。
一番驚いたのは、バスが停車する前からドアを開け放って走行していること。もちろん乗客も速やかに降りられるように、立ってスタンバイしています。日本では「バスが止まってから立ち上がるように」と教えられてきたので、これには国民性の違いを感じました。ちなみに韓国のバスの運転はものすごく荒いので、蓋のない飲み物の持ち込みは厳禁とされています。たまに観光客が持ち込んでしまって、ひどく怒られている光景を目にすることも。韓国でバスに乗るときは気をつけてくださいね。
儒教の教えが根づく国ならではの、覚えておきたいルール
一昔前の韓国ドラマや映画では、家族内でも両親に対しては敬語を使うシーンがよくみられます。最近では、家族関係もだいぶフランクになってきているようですが、実際、目上の人に対しては丁寧に接するイメージがあります。これは儒教の教えが根付いているからのようで、生活の中でも気をつけなくてはいけないことがあります。例えば、韓国の電車には日本と同じように優先席(韓国語では、老弱者席)が設けられているのですが、たとえどんなに車内が混み合っていようとも、この席は利用者のために空けておくことがルール。私ははじめ何も知らずに、優先席に座ってしまったこともあるのですが、心なしか周囲の目が冷たかったような……(笑)。旅行の際には、覚えておくとよさそうです。
やっぱりキムチは欠かせない。毎年一年分を漬ける家庭も
最近は、日本にもおいしい韓国料理屋さんが増え、大人気ですが、韓国に暮らして感じるのは、「やっぱり日本食が好き」ということ(笑)。観光地の韓国料理は確かにおいしいのですが、日常的に食べるものは、食材の鮮度のせいなのか、調味料のせいなのか、私の口にはあまり合わず……。そのため食材は日本食スーパーで買ったり、日本に帰った際には調味料を持ち帰ったりもしています。家庭料理は、日本とそんなに変わらない印象で、ハンバーグや卵焼きなんかも見かけます。基本的にはご飯とおかず、汁物が並び、キムチは必ずといっていいほど出てきます。毎年一年分を漬ける家も多く、それぞれの家のキムチがあるようです。外食でもほとんどの場合、キムチは無料で出てきます。
外食は、シェアが基本。最近人気のタンフルとは?
韓国は外食が安いので、利用する人も多いのですが、一人で外食している人はほとんど見かけません。サムギョプサルやタッカンマリなど、基本的には何人かでシェアするメニューが多いのがその理由です。日本の牛丼屋のような一人でサクッと入れるお店もないので、一人暮らしの私は、自宅で買ってきたものを食べるか、「Uber eatsのような配達サービス」を利用することがほとんど。その点はちょっと不便ですね。
また、韓国はおでんやトッポギなどを売る屋台が多く、食べ歩きしている人をよく見かけます。屋台メニューの中でも最近流行っているのが、「タンフル」というフルーツの飴。日本のリンゴ飴にも似ているのですが、シャインマスカットやイチゴなどさまざまなフルーツを飴でコーティングし、串に刺したもの。見た目もかわいく、特に若者に人気です。
仕事中もお構いなし! 1日中カカオトークでおしゃべり
一人で食事をする人がほとんどいない韓国ですが、友人や恋人、家族関係が、日本に比べて親密だと感じます。例えば友人同士腕を組んで歩いている光景も珍しくないですし、基本的に複数人で行動をしています。おしゃべり好きな人が多いことも、関係しているかもしれません。韓国では、日本でいう「LINE」のようなコミュニケーションアプリとして「KakaoTalk」が使われているのですが、とにかく四六時中連絡しあっています(笑)。仕事中であってもお構いなし。カフェの店員さんもずっとスマホをいじっているんです。ただ、素敵だなと感じたのは、タクシーの運転手さんが、私が乗っているのに、普通に妻と通話しながら走っていて。家族への想いを感じてほっこりしました。
美容大国、韓国の女性は、毎日すっぴん?
K-POPアイドルの美しさに惹かれる人は多いと思いますが、韓国人は男性も女性もみんな本当に肌がきれいです。「美意識が高い」というよりは、生まれ持った遺伝子の影響が大きいということ、そして、当たり前の感覚として肌管理をしている印象があります。例えば、美容クリニックに行くと、おじいちゃんとも言えるような年配の男性もいたりしますし、見た目に無頓着そうな人でも、肌だけはしっかりケアしていたりもします。そもそもクリニックの数も多く、治療費も安いので、日本に比べて美肌治療が身近なのかもしれません。最近では「ポテンツァ」というニードル(針)を使った治療が人気で、ニキビ跡やシミ、シワなど肌悩み全般に効果があるというので、私も先日受けに行ってきました! こうした最新治療も、気軽に「試してみよう」という人は多いですね。
ちなみに、韓国の女性は普段からすっぴんの人がほとんどです。日本では、出かけるならお化粧をして、きちんとしなきゃという感覚がありますが、韓国人の特に若い世代は、あまり人目を気にしないようです。「ありのままの自分でいよう」という意志を持つ女性が多いせいか、服装も、ジャージやスウェット姿などラフな格好の人が目立ちます。
「韓国=安い」は過去の話。食事は外食の方がおトクなことも
世界的な物価高騰は、やはり韓国にも影響を与えています。韓国政府・統計庁の発表「2023年10月消費者物価動向」によれば、10月の消費者物価の上昇率は3.8%。生鮮食品の物価はこれより上昇幅がはるかに大きく、10%を大きく上回るといいます(※)。10年程前は、韓国といえば物価が安いというイメージがあったようですが、今は日本とほとんど同じと言えるのではないでしょうか。むしろ、野菜や果物など生鮮食品は、日本で買うほうが安いと感じます。そのため、節約を考えるのなら、スーパーで買い物して自炊するよりも、外食をしてしまう方が安く済む場合も。なかでもお手頃メニューである参鶏湯やサムギョプサルは、2、3人でシェアすれば、1人あたり1,000円程度でおさまります。とはいえ、最近は飲食店や屋台もどんどん値段が上がってきているので、この先どうなるかという不安はあります。
保証金が高すぎる! 韓国で一人暮らしが難しい理由
韓国では一人暮らしをしている人があまり多くありません。というのも、家を借りるために、日本で言う敷金のような、補償金を支払う必要があるのですが、それが1年単位で100〜200万円と高額なのです。多くの社会人の年収は日本と同じか、少し少ないくらい。2、30代にとって、この金額はかなり厳しいものだと想像していただけますよね。一人暮らししたくても、経済的に難しいというのが、実情のようです。ちなみに、私は今、1ルームのアパートに暮らしているのですが、1カ月の家賃が130万ウォン(日本円で約14万円)。ソウルは家賃が高くこれくらいが相場ではあるのですが、暮らしているのはほとんど外国人です。では、若い独身者はどこに暮らしているかというと、実家である場合が多いようです。
韓国は、首都のソウルに人口が集中していて、2023年現在の居住者は約965万人。全人口の約20%が住んでいるのだとか(※)。そのため実家も会社もソウルにあれば、そこまで不便もありません。日本では、30代で実家暮らしというと気が引けてしまうこともあるかもしれませんが、韓国では割と普通のことなのです(韓国における地方自治の状況)。
【まとめ】日本と韓国。近いからこそ二拠点生活も気軽に
留学も含め、約1年半の韓国滞在を経て、最初はまったくわからなかった言葉もようやく身になってきたと感じます。韓国人のパートナーや、友人もできて、「カカオトーク」でおしゃべりするのも楽しい毎日です。その一方で、やはり一生住むなら日本がいいという思いも最近は大きくなっています。
私にとって、韓国の最大の魅力は、「日本との距離の近さ」です。2〜3時間のフライトで移動できるので、今後、日本に帰っても気軽に行き来できるなと感じています。コロナ禍以降、東京と地方の二拠点生活を選ぶ人が多くなっていると聞きますが、それこそ、東京と韓国という暮らし方も現実的だと感じます。2024年6月までワーホリビザで滞在する予定でしたが、その前に日本に戻ってもいいかなと、この距離感を実感している今は、とても自由に考えています。
写真・取材協力:山本ゆかり
文:秦レンナ
編集:ヤスダツバサ(Number X)
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