【海外広報4つのHow to ✕ Tips】グローバルの広報活動で必須な“パーソナル化”とは?
少子高齢化など、あまり明るい話題が多くはない昨今。多くの企業が外国に進出する必要性を感じ始めています。厚労省の出している予測では、2020年に1.2億人以上いた人口は2070年には8,700万人にまで減少するとされています。
また、2012年ごろは1ドル78円だった日本の通貨が、今や150円台(2024年6月現在)と、ほぼ半分の価値にまで落ち込む現状をみて、各企業ではこれまで以上に急ピッチで海外進出による外貨獲得に動いているようです。
海外進出の障壁だった言語・プラットフォームは解消へ。次の課題はローカライズな広報戦略?
内需だけでは企業の成長戦略はもはや描けない…… となれば、海外に進出することが当たり前の手段として登場するでしょう。
グローバル市場に乗り出すのは簡単なことではありませんが、「DeepL」や同時翻訳ソフトなどのAI翻訳ツールの普及で言語の壁はほぼなくなり、Amazonなどをはじめ世界共通のプラットフォームを通じて、今まで障壁とされてきたものが次々と解消されるようになってきました。
しかし、言葉やプラットフォームの問題が解消されても、特に広報の領域では市場ごとに文化や消費者の嗜好は異なるため、それぞれの市場に合わせた広報戦略が必要とされます。
多くの企業が苦労する海外広報
海外進出した企業が現地で広報活動をするとき、
日本のPR会社の各国の現地法人
世界的に有名な外資PR会社の日本法人
のどちらかにまず依頼をすることが多いようです。
広報活動で重要なのは、現地のメディアやエンドユーザーがどんな情報を求めているかを知っていること。そのため現地に根付き、マインドを知った上で活動をしているPR会社であることは必須条件となります。
また、日本企業の広報担当の誰もが流暢な英語を話せるわけではありませんし、自社の魅力や取りたいポジショニングなどの機微な部分までしっかり母国語で伝えておきたいというニーズもあります。
PR会社に本当に求めている価値とは……?
そのため、日本のPR会社の各国の現地法人や、世界的に有名な外資PR会社の日本法人などにまず依頼をするのですが、実際には
現地のメディアやエンドユーザーのインサイトを深く理解して実行までできる
日本企業の機微な部分や微妙なニュアンスまで理解できる
この両方を満たせるPR会社や、そうした担当者のいるPR会社は非常に数少なく、どちらかが欠けているPR会社に高いコンサルフィーを払いつつあまり満足もできず、とはいえ、そう簡単に代替案が見つかることもないため、何となく海外広報をそのまま行っている企業が多いのが実情です。
今回は特に、日米の違いを掘り下げ、上手に広報活動をするためのHow to とTipsをご紹介したいと思います。きっと内製化やPR会社選定のヒントにもなるはずです。
グローバルの広報活動で必要な4つのHow to ✕ Tips
#01 Who:ターゲットのメディアや記者をリスト化
まず、自社の業界や製品、競合などの情報をリサーチして、取り上げられている主要なメディアをリストアップします。新聞や業界誌、ビジネス誌、オンラインニュースサイトなどはだいたいGoogle検索で引っかかってくるので、Web上でまずは検索してみると良いでしょう。
それらの記事を見ると、たいてい署名記事になっていて、執筆者名が書かれています。その名前で検索をすれば、そのライター・エディターがご自身の業界にどの程度興味関心を持っているか、どんな論調で記事を書いているのか、がわかります。
有力なライターやエディターの中には自分の連絡先を公開している人もいますし、SNSのアカウントを持っていることもありますので、それらをたどって直接連絡する方法を探し出します。
データベースを有料で提供する「CISION」などのようなサービスもありますので、それらを駆使してみるのも1つの方法です。
✓ 日本とグローバル広報の違いを解説
#02 What:米国で成功するためにはパーソナルなアプローチが必須
では、個々のライターやエディター、業界ごとに存在するインフルエンサーをターゲットにアプローチする際にはどのような点が大事なのでしょうか。
Tips:4つのアプローチポイント
魅力的で端的な件名:件名が勝負! 短く明確で、相手の心をわし摑みに
パーソナルな挨拶:相手の名前を書き、過去の記事について言及
ニュースのポイントの提示:ニュース性・話題性、今取り上げるべき理由を説明
やってほしいことを明確に:取材してほしいのか、サンプルを受け取ってほしいのか、Zoomなどでピッチする機会がほしいのか、など、こちらがしてほしいことを明示
ここで少し、ライター・エディターの関心に合わせてパーソナライズされたメッセージというものがどんなものか事例を示したいと思います。
例えば、
「あなたの●●に関するコメントに対し、私の会社のCEOは追い風となるような話ができます。具体的には……」
「私たちの●●のサービスは、先日あなたが記事で紹介した技術を具現化したものです」
など、極めてパーソナライズされた内容です。
広報担当者がよくやってしまう「いかにも一斉送信だとわかるメール」を送っても、日本の記者以上に多くの情報を受け取る個々のライターやエディターからは、なかなか返信はもらえません。
ぜひ、相手の心ぐっとつかむようなメールを心掛けてみてください。
#03 How:もちろんプレスリリース+α も大事!
これは日本もアメリカも変わりませんが、プレスリリースはその拡散性の意味や、企業のストック情報として残していく意味でも重要です。
日本で「PR Times」や「@PRESS」など、ワイヤーサービスと呼ばれるプレスリリース配信サービスが、米国でも存在します。例えば、「Business Wire」や「PR Newswire」などがそうですが、オンライン上に一気に拡散するその力をぜひ上手に使ってみてください。
そして、ただ拡散しただけで満足せず、上記(#01)でリストアップしたターゲットをはじめ、既知のメディアへのフォローアップをしてみると、思わぬ収穫があるかもしれません。
#04 Why:ストーリーテリングをより重視してみる
昨今、日本でもそうですが、米国ではさらにストーリーが重要視されます。なぜなら、ただ商品の説明をするだけでは、日々 似たような商品や技術が山ほど生まれる米国では戦えないからです。
なぜその商品サービスを開発したのか、その開発にはどんな人が関わり、どんな人に喜んでもらっているのか…… など、情景がありありと目に浮かぶような情緒的価値(ストーリー)の提供が必要です。
そして、ニュースレターや定期的な更新を通じて、メディア関係者とのコミュニケーションを継続したり、取材やメディア露出が叶った際にはきちんとお礼を伝えることも忘れないようにしましょう。
日本でも、海外でも、やっぱり広報は地道に「相手の心を掴む」仕事。
ここまで読んでいただいてもうお分かりかもしれませんが、広報活動は、日本もアメリカもきわめて「地道」です(涙)。 残念ながら魔法の杖のような手法はありません。
私の経営するJAYIDでは、英国や米国、シンガポール、ドバイ、スペインの現地PR会社と協業をして海外PRを行っていますが、どのPR会社でも毎日さまざまなメディアのライターやエディターをリストアップし、メールの文面やネタを相手の興味関心にあわせてカスタマイズし、毎日数十〜数百本のメールやDM(SNSなどにおけるダイレクトメール)を送っています。
米国との違いとして挙げたメディアリレーションを行う相手や、ピッチの仕方が日本よりもかなりパーソナルであることや、現地の人やメディアに刺さるポイントを除けば、多くの広報担当者の動き方は日本と共通しています。
ですが、こうした人間にしかできない「相手の心を掴む」コミュニケーションを通じて得たメディア露出は格別です(これも世界共通ですね!)。ぜひこれからも、広報を生業とする担当者同士、一緒に学び、頑張っていけたらと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
本記事が、グローバル広報活動を考えている企業やその広報担当の方々にとって、具体的なアクションプランを考える一助となれば幸いです。
文:穐吉なな子(JAYID)
編集:ヤスダツバサ(Number X)
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