【現地人が通うフランス🇫🇷おすすめグルメ】サスティナブルな美食の隠れ家レストラン3選(ミシュラングリーンスター獲得店)
「旅行する価値のある卓越した料理を求めて」
コロナ禍以降、フランスのレストランのトレンドとして、かつて星付きレストランで働いていた料理人たちが、郊外や田舎町で地産地消をコンセプトにしたお店を開く、という流れがあります。
今回は、パリから行ける田舎町にある、3軒のレストランをご紹介。車がないとアクセスが不便だけれども、足を運ぶ価値があり、新たな食文化を提案してくれます。いずれも宿泊施設併設で、「ミシュラングリーンスター」を獲得しています。
タイヤメーカーがグルメガイドを始めたわけ。そこにはフランスの美学を感じる。
そもそも「ミシュラン」とは、白い段々がついたキャラクター「ムッシュ・ビバンダム」が印象的なフランスのタイヤメーカーなので、“美食”とはかけ離れたイメージがあります。
「ミシュランガイド」は、パリ万国博覧会が開催された1900年にできたもので、ドライブ文化を後押しするために、タイヤの修理方法やドライバー向けのレストラン・宿泊施設などをまとめた“ドライバー向けの無料ガイド”として作られました。
その後、グルメな読者にもガイドブックが浸透するようになり、昨今の“グルメガイド”として地位を築いていったようです。タイヤの広告を打つのではなく、楽しい経験を提案することでタイヤの消費を促す、というアイデアにはフランスらしい情緒を感じますね。
「持続可能性の⾼いガストロノミー、ひいては持続可能性の⾼い社会に向けて取り組むシェフやレストランを応援したい」と考えているミシュランは、それに沿ったサスティナブルなレストランに、四つ葉のクローバーがアイコンの「ミシュラングリーンスター」を与えています。
#01 サスティナブルな自家菜園で採れた野菜を楽しむ「ル・ドワイヨネ(Le Doyenne)」
パリから南に36km、1時間ほど車を走らせた田園地帯の中の小さな村サン=ヴランに、突如として現れる立派な門扉。中に入り小径を進むと、素朴なレンガ造りだけれどセンスが光る建物が出迎えてくれます。
さらに奥に進むと、貴族の邸宅の厩舎を改装したという、一面大きな窓ガラスの開放的なレストラン空間に。そこからは「レストランの中心」である、有機農法の自家菜園の風景が広がります。
ふたりのオーストラリア人シェフ、ジェームズ・ヘンリーとショーン・ケリーによる、素材の味を生かした気取らない料理は、季節の自家製野菜がふんだんに使われています。
夏には野菜や果物を中心に、秋にはジビエやキノコが、農閑期は大西洋で獲れた海の幸が登場。ワインのセレクションも、彼らの哲学に則して、除草剤や殺虫剤の使用を制限したナチュラルワインが提供されます。
フランスでは珍しく、大皿を複数人でシェアするスタイルもあったり、アンティークなカトラリーが人によって異なったり、食前酒や食後酒を農園がみえるテラスで楽しんだりなど、型にはまらない自由さも魅力。
前菜からデザートまでの野菜を中心とした料理は、ちょうどよいボリューム。併設の店舗ではレストランで提供されるパンと同じものを購入することができますが、到着したらすぐに買っておかないと、帰る頃には棚はカラッポに。
パリから日帰りで行くことができ、周囲の風景が美しいので、天気の良い休日のランチがオススメです。
#02 ひとひねりある美しい一皿「ラ・ガストロノミー・ア・プリマー(La gastronomie à Primard)」
パリから西に80km向かったガンヴィルにある、18世紀の貴族の邸宅「ドメーヌ・ド・プリマー」。ここには、4つの異なるコンセプトのレストラン「レ・シュマン」、「オクターヴ」、「ラ・ターブル・ドット」そして、「ラ・ガストロノミー・ア・プリマー」があります。
その中でも、「ラ・ガストロノミー・ア・プリマー」は、新しい食を体験できる空間で、ロマン・メデールがシェフを務めます。グリーンスターに加えて、「ミシュラン一つ星」も獲得しました。
レストランの食材は地元の生産者から提供され、果物や野菜の一部は、自家菜園の有機農業のものが使われています。メニューは菜園を管理する庭師との対話の中から生まれることも。
どの料理も繊細で美しく、まろやかさと渋み、甘味とざらつき、酸味と苦味、とコントラストある味わいが魅力。
また、最近フランスで注目され始めている、発酵食品も取り入れ、発酵ビーツやメロンワイン漬けのズッキーニ、亜麻仁のタルトレットなど、こだわりのひと工夫が組み込まれています。
広大な敷地には、いくつも建物が点在し、おとぎ話のお城を訪ねたような気分に。こちらも菜園や、動物たちがいる飼育小屋の見学もできますよ。
#03 地の食材を使った、地元密着型の親近空間「ル・ガール・シャンペット、ファーム / レストラン(Le Garde Champetre, Farm/Restaurant)」
かつて、SNCF(フランス国有鉄道)の倉庫だった建物をリノベーションした、地元のワイン生産者2社と4組の共同経営者によるレストラン。パリから南東へ、シャンパーニュ地方の方角に250キロ、車で2時間半のジェ=シュル=セーヌにあります。
有機菜園を併設し、地元の食材を使った、新鮮で軽やかな料理を提供しています。 地元密着型の親しみやすい空間で、地域住民の人たちと思しきグループも。地酒であるシャンパーニュと料理のマリアージュを楽しめるお店です。
近くのエコロッジ型Airbnbを拠点に。
「ル・ガール・シャンペット、ファーム / レストラン」にも、宿泊施設は併設されていますが、近くにユニークなエコロッジ型(自然環境に配慮した施設とサービスを提供する宿泊施設)のAirbnbを見つけたので、そちらに泊まりました。
このAirbnbはワインの造り手がオーナーで、移動ワゴンのような見た目をしています。パリのセーヌ川が氾濫しそうになった際に水位の調整がされると、川上であるこの地域は冠水してしまうので、そのための高床式だそう。
小さいながらも清潔感があり、快適に過ごすことができました。コロナ禍以降、こういった自然空間に没入できる宿泊施設、エコロッジも増えているように感じます。
これら3つのレストランは、周囲のフランス人達から素敵な場所がある、と教えてもらったものでした。どこもグリーンスターを獲得していますが、それを基準に選んだわけではありません。
彼らがグリーンスターのレストランを自然に良いものと感じ、オススメするということに、改めてサステナビリティへの関心の高さを感じます。
フランス観光の際、郊外レストランへ足を伸ばしてみるという選択肢を加えてみるのはいかがでしょうか?
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※ウエマツさんはフランス生活関連の記事も発信中
写真・文:ウエマツチヱ
編集:ヤスダツバサ(Number X)
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